Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

2006-01-01から1年間の記事一覧

藤原正彦『国家の品格』  ★★☆

国家の品格 藤原 正彦 猛烈な胡散臭さに襲われてしまった。それというのも、私が最近著者と同じく日本万歳な気分に陥っていたのだけど、米原万理『魔女の一ダース』内でこんなことを言っていたからだ。 本来人間は生命体固有の自己保存本能を持っており、そ…

綾辻行人『暗黒館の殺人(下)』  ★★★

暗黒館の殺人 (下) 綾辻 行人 「何故、選ばれたのが私だったのですか。よりによってこの私が」 「出会ってしまったから、だよ」 玄児はそう答え、静かに腕を組んだ。 「この春に君と出会って、俺は……」 ミステリじゃねえ……!笑 少なくとも本格ではないでしょ…

長野まゆみ『絶対安全少年』  ★★★☆

絶対安全少年 長野 まゆみ 長野まゆみという人がよくわかる一冊。今まで少年といえばあさのあつこだったんだけど、長野さんも相当なものですね……あさのさんは12~18歳、長野さんは6~15歳の少年を愛しているみたい。私はあさのさんよりかな!笑 長野さんは静…

司馬遼太郎『燃えよ剣』  ★★★★☆

燃えよ剣 (下巻) 司馬 遼太郎 ちょっ、待てよ……! 土方お前そりゃねえよ反則だよ剣も燃えちゃうよ……! と取り乱したくなるほど土方が格好いい小説でした。空知英秋が「銀魂」でいじられキャラにするのもよくわかるってもんです。そうでもしなきゃこんな漢扱…

小川洋子『ミーナの行進』  ★★☆

ミーナの行進 小川 洋子, 寺田 順三 「いいねえ。とてもいい漢字。だってお月様は二つないもの。ないものなのにこうして二つある。ということは、とっても大事な仲間同士ってことよ。同じ大きさで、上と下じゃない。横に並んでる。そこがいいね。平等なの。…

竹内真『自転車少年記』  ★★☆

自転車少年記 竹内 真 たった一人で、好きな方へと走っていける。知らない町を通りすぎ、見知らぬ世界に旅立てる。――きっとそれは、一人ぼっちだからできることだろう。 そんな景色を眺めて進んでいるうちに、失ったものに対する感情だけで走っているわけじ…

北乃坂柾雪『匣庭の偶殺魔』  ★★☆

匣庭の偶殺魔 北乃坂 柾雪 「犬猫の尻を追いかけて何が楽しいんだろうねっ? 変態としか思えない。あそうか、探偵って馬鹿じゃなくて変態だったんだなシン。僕に触るなよ!」 「そりゃあ……酷い酷過ぎだよ龍哉。俺が変態の汚名を着せられるのはいいとしても、…

時雨沢恵一『キノの旅 Ⅹ』  ★★★

キノの旅〈10〉the Beautiful World 時雨沢 恵一 「そうですね……、酷い道とか、厳しい天候とか、長くシャワーが浴びられないとか、さっき話した食事のこととか、いろいろと不便なことはありますけど、一番ボクが厄介だと思うのは――」 「思うのは?」 「生き…

都築道夫『七十五羽の烏』  ★★☆

七十五羽の烏 都筑 道夫 「犯罪の捜査ってのは、むずかしいね。それにしても、腹がへったな。犯罪の捜査は、とても個人の手には負えないよ。こっちはやはり、おばけ専門ということで、お茶をにごして、逃げだそう。腹がへったな。今夜、家のまわりをひと廻り…

米原万里『魔女の1ダース 正義と常識に冷や水を浴びせる13章』   ★★★★☆

魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章 米原 万里 冷や水浴びた!! 目から鱗がぽろぽろ落ちたよ。見につまされる思いでした。読んで損はないでしょうこの本は。視野を広げ世界に目を向けて、もっと色んなことを知りたい、と思わせてくれる。まだ…

奥田英朗『ガール』  ★★★

ガール 奥田 英朗 でもそれは男たちが勝手に作ったゲームで、聖子には関係がない。そもそも派閥ごっこに、女子は入れてもらえない。(ヒロくん) 女は男の目なんか気にしていない。自分が楽しいからおしゃれをするのだ。若くいたいと思うのだ。(ガール) 女…

石持浅海『顔のない敵』  ★★★☆

顔のない敵 石持 浅海 対人地雷は、殺す兵器ではない。死亡者も数多く出ているが、基本的には殺さずに大怪我をさせることが目的だ。敵の兵士を負傷させ、その兵士の運搬や治療に別の戦力を割かせる。一人の負傷者を後方に送ろうと思えば、最低二名の兵士が担…

海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』  ★★

ナイチンゲールの沈黙 海堂 尊 「僕は加納を嫌ってはいません。苦手なだけです。加納は組織第一主義でして。行き着く先はファシズムです。だから、個人の自由と享楽を最大限に尊重する僕とは人生哲学上、相容れない存在なんです」 田口は白鳥の加納評に妙に…

飯田譲治・梓河人『アナン(下)』  ★★★★

アナン〈下〉 飯田 譲治, 梓 河人

飯田譲治・梓河人『アナン(上)』  ★★★★

アナン〈上〉 飯田 譲治, 梓 河人

若竹七海『火天風神』  ★★☆

火天風神 若竹 七海 台風だってひとの誇りを奪い取ることはできない。たくさんの命を取ることができても、文明の一部を切り取ることができても。台風もひとの暮らしも地球が生み出したもの。拮抗しあい、結果ひとは絶望し続けてきた。けれど、ひとは誇りだけ…

ルイス・サッカー『穴』  ★★☆

Holes Louis Sachar "Is something wrong?" he asked her. "Oh, Sam," she said. "My hreat is breaking." "I can fix that," said Sam. Zero wrote the letters as Stanley said them. "Zero," he said, looking at his piece of paper. His smile was too …

有川浩『レインツリーの国』  ★★★

レインツリーの国 有川 浩 実際に会っての取材に応じてくださった方が偶然にも私の本を全部読んでくださっている方で、「難聴者を主人公にして恋愛物を書く」と申し上げましたら、 「それはあれですか、自衛官が地雷処理とかで失敗して難聴になったりするん…

三浦しをん『風が強く吹いている』  ★★★★★

風が強く吹いている 三浦 しをん さんざん泣いた。いい作品だった。三浦しをんを心底尊敬した。エッセイで駅伝の話を書きたいと言っていたのは知っていたが、ここまでのとは。私の中で女性による女性のための男性メインのスポーツ三大小説が決定しました。森…

吉村萬壱『ハリガネムシ』  ★☆

ハリガネムシ 吉村 萬壱 こういう事がしてみたかったのだと、この時初めて気付いた。人間の肉体を思い通りに切り刻みたいという欲望を、ハリガネムシのように体の中に飼っていたらしい。 途中のグロ描写が私の嫌なツボに入り、一度断念しかけた。漫画ならい…

江戸川乱歩『鏡地獄』  ★★★★☆

鏡地獄―江戸川乱歩怪奇幻想傑作選 江戸川 乱歩 なぜといって、彼女の願いをしりぞけかねて、私がその鞭を彼女のなよやかな肉体に加えたとき、その青白い皮膚の表面に、俄かにふくれ上がってくる毒々しいミミズ脹れを見た時、ゾッとしたことには、私はある不…

あさのあつこ『NO.6 #5』  ★★★☆

NO.6(#5) あさの あつこ, 影山 徹, 北村 崇 「傲慢になるな。もう少し、ありのままの死を敬え。他人に安らかな死を与えられるなどと思い上がるな。もう二度と、他人の頸に指をかけたりするんじゃない」 そうだ、ネズミ。ぼくは自信がある。きみの傍らにいる…

有川浩『図書館内乱』  ★★★★☆

図書館内乱 有川 浩 五年前に一回会っただけだけど、 あたしは今でもあの人に憧れてるし尊敬してるし、あの人が好きです。 前後の状況からして引っ込みがつかなくなったのは明白だ。 「……かわいそうな顔すんなそこ!」 「あ、ごめんそんな顔になってた?」 …

三浦しをん『三四郎はそれから門を出た』  ★★★★

三四郎はそれから門を出た 三浦 しをん 「私、けっこう本読むんだー。『冷静と情熱のあいだ』はすっごくよかったよ」なんて言う、おまえらなんてみんな死ね。合コン中の男女を横目に、居酒屋で一人、苦々しい思いでビールを飲んだことが何度あっただろう。私…

森絵都『アーモンド入りチョコレートのワルツ』  ★★★★★

アーモンド入りチョコレートのワルツ 森 絵都 信じられないほどよかった。図書券があったので購入したんだけど、買ってよかった。小さい頃に一度読んでいるはずなのに内容をすっかり忘れていて、でもあの頃じゃこんなに「いい」と思えなかっただろう。あんま…

真保裕一『ホワイトアウト』  ★★★

ホワイトアウト 真保 裕一 富樫の全身全霊でぶつかっていく姿勢はすさまじい。

武者小路実篤『友情』  ★★☆

友情 武者小路 実篤 「恋はあつかましくなければできないものだよ」 「ほんとうの恋はあつかましいものにはできない」 「ともかく恋も一種の征服だからね」 「僕だって君の位置にいれば、きっと積極的に出ろと言うかもしれないがね。あつかましく出る人がい…

綾辻行人『暗黒館の殺人(上)』  ★★★

暗黒館の殺人 (上) 綾辻 行人 亡びてしまつたのは 僕の心であつたらうか 亡びてしまつたのは 僕の夢であつたらうか 記憶といふものが もうまるでない 往来を歩きながら めまひがするやう(中原中也) いかがわしー!笑 私はこれを求めていたのよっていういか…

倉知淳『星降り山荘の殺人』  ★★★★

星降り山荘の殺人 倉知 淳 男が喋っている。和夫も、テレビで見慣れた顔だ。彫りの深い、日本人離れした甘い顔立ち。顎はギリシャ彫刻のようにすっきりとなだらかなラインを描き、眉は柳さながら優美に美しく、その黒い瞳はどこまでも深く、黒曜石の湖のごと…

米澤穂信『ボトルネック』  ★★★

ボトルネック 米澤 穂信 ぼくも、ぼくなりに生きていた。別にいい加減に生きてるつもりはなかった。しかし、何もかもを受け入れるよう努めたことが、何もしなかったことが、こうも何もかもを取り返しがつかなくするなんて。 苦っ!! 米澤といえばほろ苦さ、…