Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

2005-04-01から1ヶ月間の記事一覧

有栖川有栖『白い兎が逃げる』  ★★★

白い兎が逃げる 有栖川 有栖 「謎の血文字が解読できたら報せてくれ。俺も答えが知りたい」 「電話してやるさ。もう年内は顔を会わすことがないかもしれないな」 「その面を見るのも今世紀はこれが最後か。――いい年を」 「ああ、来世紀もよろしく頼む」 どこ…

吉本ばなな『TUGUMI つぐみ』  ★★★★

TUGUMI(つぐみ) 吉本 ばなな それがいくら自然の生み出したやむをえないこととはいえ、つぐみのこわれた肉体に、つぐみの心が宿っているというのはひどく切ないことだった。つぐみには誰よりも深く、宇宙に届くほどの燃えるような強い魂があるのに、肉体は極…

麻耶雄嵩『翼ある闇』  ★★★

翼ある闇―メルカトル鮎最後の事件 麻耶 雄嵩 どんでん返しって、こういうことね。この小説には舌を巻いてしまうよ。麻耶雄嵩の他の著作が気になっている自分がいるよ。『蛍』の方が評価は上だけど、こっちの方が衝撃でかい。 先輩に借りた本なので、細かく感…

浅田次郎『プリズンホテル』  ★★★★

プリズンホテル 浅田 次郎 安息という言葉を口にしたとき、ぼくはそれがふしぎなくらいこのホテルにふさわしいことに気付いた。 ヤクザが経営し、懲役がえりが訪れ、へんてこな従業員が不器用に世話をし、まがいものの調度品で飾り立てられたこのホテルが、…

三浦しをん『極め道』  ★★★★

極め道―爆裂エッセイ 三浦 しをん 私はアルバイト先で毎日十一時間も上記のような歌を聞かされつづけ、いいかげん脳細胞が壊死しました。私に許された音楽は、現在のところ上記の類の曲と、閉店の案内の「蛍の光」しかないのです。これを苦痛といわずしてな…

島田荘司『斜め屋敷の犯罪』  ★★★★☆

斜め屋敷の犯罪 島田 荘司 「あなたもそう言われますか? いずれにしても、これはなかなか凝った犯罪です。そしてわれわれはすでにゲームを始めているらしい。あまりありきたりのやり方で王手を言うのでは、この芸術家に対して失礼でしょうね」 一度全て消え…

歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』  ★★★☆

葉桜の季節に君を想うということ 歌野 晶午 「どうして俺が特別であってはいけないんだ。誰が決めた。特別か特別じゃないかは生きてみないとわからないじゃないか。優秀な人間を見て、自分は適わないと思ったら、その時点でもう負けだ。自分の可能性を信じる…

若竹七海『プレゼント』  ★★☆

プレゼント 若竹 七海 「今の世の中、ひとを死に追い込むことは簡単だ。心の毒気にあててやればいいんだって。新しい呪い方だ、しかも自分が呪うんじゃない、赤の他人が代わって呪ってくれているようなものだって」(ロバの穴) 初若竹七海。彼女の本はブラ…

村山由佳『BAD KIDS』  ★★★

BAD KIDS 村山 由佳 「別にそんなんじゃないのにね。あたしたち、何だかお互いにつらくなっちゃって、それでお互いの手で傷口をふさぎ合ってるだけなのに……」 愛し合っていないのに行為に及ぶのは間違っているとか、性の安売りだとか言う奴がいる。僕も基本…

小野不由美『東亰異聞』  ★★★☆

東亰異聞 小野 不由美 「ぼくは新時代に夢を見すぎていた。だから、諦めざるをえなかったんだ」 「時代は変わっていくのですよ」そう万造は言った。「変わっていく性質のものだからです。その行く先がどこであれ」 「その、通りだ」 「それでも水が高いほう…

畠中惠『ぬしさまへ』  ★★★

ぬしさまへ 畠中 恵 ため息も人がいないところで、こっそりと遠慮がちにつく。ただ妖たちにだけは、時々心掛かりをこぼすことがあった。 (それなのに、頼りの妖たちが突然いなくなったら、私はどうなるのかね) 小さい頃からいつも変わらず一緒だったのに。…

三浦しをん『夢のような幸福』  ★★★★☆

夢のような幸福 三浦 しをん ケッ。私はもぞもぞと布団の奥深くにもぐりこむ。 「そんな、数字で簡単に表せるようなことが『ご条件』なら、だれだって苦労はしないわよ。私が唯一数値化してほしいと思うのは、胸毛の密集度くらいだっつうの」 三浦しをんの胸…

三浦しをん『人生激場』 ★★★★☆

人生激場 三浦 しをん 「そうだよね。もちろん、Fはそのフォルダを開いてみたの。そしたら『秘密箱』の中には……裸の少年たちの画像が!」 「ぶわっははは」 もうだめだ、腹筋がちぢれる。あんちゃんと私は甘味屋の店内で悶絶した。 三浦しをんマンセー! 『…

瀬尾まいこ『卵の緒』  ★★★★

卵の緒 瀬尾 まいこ 「母さんは、誰よりも育生が好き。それはそれはすごい勢いで、あなたを愛してるの。今までもこれからもずっと変わらずによ。ねえ。他に何がいる? それで十分でしょ?」(卵の緒) 「今は僕、まだばかだけど、これから賢くなっていろんな…

佐藤多佳子『しゃべれども しゃべれども』  ★★☆

しゃべれどもしゃべれども 佐藤 多佳子 自信って、一体何なんだろうな。 自分の能力が評価される、自分の人柄が愛される、自分の立場が誇れる――そういうことだが、それより、何より、肝心なのは、自分で自分を“良し”と納得する事かもしれない。“良し”の度が…