2006-01-01から1ヶ月間の記事一覧
セリヌンティウスの舟 石持 浅海 「セリヌンティウスが信じたのは、メロスが帰ってくることじゃない。メロスの絶対に帰ってくるという意志を信じたんだ。同じように僕たちはみっちゃんを信じている。彼女の意志を信じている。だから結果を受けとめるだけでは…
モロッコ水晶の謎 有栖川 有栖 久しぶりに有栖川読んだ~! 巻末を見て衝撃を受けたのは、私が『緋色の研究』以外の火村シリーズを読破していたことです。……嘘でしょ。そんな火村先生大好きだった覚えはないのに。江神さんの方はデビュー作である『月光ゲー…
イリヤの空、UFOの夏〈その2〉 秋山 瑞人 「ああ、来てると思うよ。まだ顔見てないけど」 「――? 顔見てないのにどうしてわかるの?」 もし清美に何か言われたら、こう言ってやればいい。 だって仕方ない。そういう約束なんだから。 お詫びなんだから。 うお…
明日の記憶 荻原 浩 人の死は、心臓の停止した瞬間に訪れるのか、それとも脳が機能を失った時からなのか、その論争に関してはいろいろな話を聞かされてきたが、記憶の死はどうなのだろう。記憶の死だってイコール人の死ではないのか。 怖かったのだ。記憶を…
インディゴの夜 加藤 実秋 こちらも面白かったー。池袋ウエストゲートパークみたいなノリ? それの渋谷版? どこかで読んだような気がする……IWGPがどうも苦手な私ですが本書は楽しめました。晶って葉村晶とすっごいかぶるね! 女言葉をやめればいいのに!(…
gift 古川 日出男 想像力だけで私は自滅する。だから決めた。あたしは餓死しよう。(あたしはあたしの映像のなかにいる) 出し抜け! 叫んだ。世界を出し抜け!(鳥男の恐怖) よかった!! 『ベルカ、吠えないのか?』から日出男入門、『アビシニアン』『ボ…
銀盤カレイドスコープ〈vol.1〉ショート・プログラム:Road to dream <とにかくどんなに、絶対、を願おうが祈ろうが、そんなことは起こり得ない。もしジャンプが決まったとしても、全確率中の、成功、のエリアに目が転がっただけさ。勿論、失敗もそれに同じ…
空の中 有川 浩 「いや、この辺でそろそろ元気ほしいなって。義務感とか使命感とか、そろそろ限界かなって。俺、国防の人じゃないから」 日本の運命などを賭けられても、対象が大きすぎて実感が湧かない。 「誰かのために頑張る図式なんか欲しいなあ、と思っ…
Harry Potter and the Chamber of Secrets (Harry Potter) J. K. Rowling, Mary Grandpre "Oh, no," said Ron. "Oh, no, oh, no, oh---" "Shut up," said Harry frantically. "It'll hear you." "Hear me?" said Ron in an unnaturally high voice. "It's al…
塩の街―wish on my precious 有川 浩 「世界のために好きな人を諦めろなんて、誰が言えるって言うのよ。そりゃ、助かりたくないって言ったらウソになるけど。あたしが自分で救うわけじゃないんだし」 ―――あたしたちは、恋だろうか。 先日読んだ『海の底』の…
禁じられた楽園 恩田 陸 才能とは過剰である、とは彼女の師匠の台詞である。 型もスタイルも忘れ、ひたすら手を動かして造りまくれ。おまえらにはそんなもの二十年早い。頭で作っているうちは、個人のスタイル云々など言えたものではない。 (中略) 数と量…
星の王子さま サン=テグジュペリ, 内藤 濯 「たいせつなことはね、目に見えないんだよ……」 「ぼく、きみのそば、はなれないよ」 仏語学科の友達の課題に、「仏語で『星の王子様』の続きを考えなさい」というのがあったらしい。レポートとテストがいち早く終…
交換殺人には向かない夜 東川 篤哉 「資格は?」「大型免許」 「趣味は?」「探偵――」 「なにッ?」「――小説」 「特技は?」「ヴァイオリンを六歳から――」 「ほほう!」「――八歳まで」 「……!?」「他に何か?」 「ハッキリいえば、僕は雪の上で誰かを追跡し…
砂漠 伊坂 幸太郎 「砂漠で雪を降らせてみなよ」と唆されて、立ち上がらない西嶋はすでに西嶋ではない、と知り合って間もない僕ですら思ったのだから、西嶋歴十八年以上の西嶋ならなおさらそう感じたはずで、だからなのか、すっくと立ち上がった。 わー伊坂…
コッペとBB団 その1 田口 仙年堂, はしもと しん 「俺達は、こいつを正しく使うために集めてるわけだ」 そう、ブラック・ブリッツの本来の目的はそれだ。 世界中のデイ・ストーンを集め、管理することによって平和な世界が築けるという理念の下に、必要悪と…
模像殺人事件 佐々木 俊介 「しかし啓作、難題は何だいだよ。誰が殺したか? いかに殺したか? 俺が考えるに、問題はそんなところにはない。 俺がお前に委ねたい設問はただこれひとつさ。その屋敷でいったい何が起こったのか?」 ここのとこラノベばかり読ん…
海の底 有川 浩 「どこまでその芸風で行かれるか楽しみですな」 茶化すと烏丸が鼻で笑った。 「警部に言われる筋合いはないな。そちらも芸風は同じだろうが、未だに」 「は?」 「バカの指図は受けんと突っ走ってその年だろう。俺もそこまでは行くさ」 死ぬ…
キノの旅〈9〉the Beautiful World 時雨沢 恵一 「自分を守るため、もしくは誰かを守るため、戦わなければならない時に一番重要なことは、常に頭に置いておくべきことは――“不意打ちをする”ことです。相手に準備も心構えもないうちに、もしくは向こうのパース…
死がやさしく笑っても―約束の街〈4〉 北方 謙三 「俊一よう、男同士の同盟ってのは、こんな時に解消するもんじゃないんだ。相手がひどい状態の時に解消するのなんか、同盟とは呼べない、と俺は思う」 息が切れた。顔が強張ったようになった。俺だって。不意…
マルドゥック・スクランブル―The Third Exhaust 排気 冲方 丁 「バロット……」 ウフコックが呼んだ。バロットは、ぎゅっとスーツの肩を抱いた。 ――愛されたいと思った人は沢山いた。でも愛したいと思った人はあなただけ。 「……我々は殺さない。我々は殺されな…
マルドゥック・スクランブル―The Second Combustion 燃焼 冲方 丁 「動物が様々に捕食以外の殺害行為に走る一方、人間は、生命と死に対して、価値という観念を、長い時間かけて創り出してきた。命の価値があるのではない。人間は価値という観念を創り出し、…