チョ・セヒ『こびとが打ち上げた小さなボール』 ★★★★
ツイッターで話題になっていたので読んだらめちゃくちゃ重くて打ちのめされたけどいい読書だった。初めての韓国小説が本書だったのは幸運だったのかもしれん。
取り壊された家の前に立っている父さん。小さな父さん。父さんの体から血がぽたぽたとしたたり落ちる。真っ黒な鉄のボールが、見上げる頭上の空を一直線につんざいて上がっていく。父さんが工場の煙突の上に立ち、手を高くかかげてみせる。お父ちゃんをこびとなんて言った悪者は、みんな、殺してしまえばいいのよ。70年代ソウル―急速な都市開発を巡り、極限まで虐げられた者たちの千年の怒りが渦巻く祈りの物語。東仁文学賞受賞。(Amazon)
「刊行から30年、韓国で今も最も読まれる130万部のロングセラー」だそうで。それもそのはず、内容がまったく古びていないんですよ。資本家と労働者と労組問題。現在進行系で安月給と長時間労働に悩まされている身にとっては人ごとではない。
まあとにかく読んでみるといいと思う、連作短編集の形式だから読みやすいし。最初の「メビウスの帯」は導入なので、よく分からなくてもリタイアせず先に進んでください。二つ目の「やいば」のラストには身を切られるようだった。その後はまた視点が変わって語り口が饒舌になる。わたしはあまり専門的なことは言えないけれども、韓国アイドルにハマっていることもありもっと色々読んでみたいと思いました。
ただ、心身ともに健康なときに読まないとそこそこのダメージを受けるから注意してください。