Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

冲方丁『マルドゥック・スクランブル The Second Combustion 燃焼』  ★★★

マルドゥック・スクランブル―The Second Combustion 燃焼
マルドゥック・スクランブル―The Second Combustion 燃焼
冲方
「動物が様々に捕食以外の殺害行為に走る一方、人間は、生命と死に対して、価値という観念を、長い時間かけて創り出してきた。命の価値があるのではない。人間は価値という観念を創り出し、それを様々なかたちで命に当てはめたのだ。そうすることによって初めて、人間は本能の完全な支配に対して拮抗し、圧倒的な強さと複雑さとを持った社会を生み出し、他の生物を凌駕して、地球上の全領土に進出することができたのだ」

 二巻の新登場人物であるプロフェッサーの「同族同士の殺し合いは人間に限ったことではない」という話がすっごく面白かったです。動物間でも親殺しや性的虐待、自殺や娯楽としての殺戮が存在するんですってよ! 人間は他の全ての生けるものよりも価値が低い、という考え方の私ですが、その理由の一つが、動物は生きるために生きている、と思っていたからです。そんなことはないんだね。殺すために殺し快楽を得る行為は動物全てに共通するみたい。考えを改め、もっと勉強したいと思いました。
 緊急事態において科学技術の使用が許可されるスクランブル‐09。人工皮膚をまとって再生したバロットにとって、ボイルドが放った5人の襲撃者も敵ではなかった。ウフコックが変身した銃を手に、驚異的な空間認識力と正確無比な射撃で相手を仕留めていくバロット。その表情には、強大な力への陶酔があった。やがて濫用されたウフコックが彼女の手から乖離した刹那、ボイルドの圧倒的な銃撃が眼前に迫る――。(裏表紙)
 この説明は一巻の後半部分にあたり、二巻については殆ど触れられていないので補足をば。バロットは目覚めると“楽園”にいた。そこには兄妹のようなトゥイードゥルディや、その恋人(イルカ)トゥイードゥルディムがいた。彼が入っているプールは巨大な端末になっていて、世界中のコンピューターにアクセスできる。バロットはプールの使用を求め……。後半は彼らがカジノへ乗り込みます。カジノ篇はかなり長く、三巻へ続く。
 さてさて、二巻です。表紙は血を流すウフコックとバロット。段々と面白くなってきたぞ。バロットははっきり「生きたい」と願い、ウフコックを愛している。シェルをつくって人形になっていた頃より大分、人間っぽくなったのかな? ロボットって言っても人間を改造しただけだから、心がないわけじゃないのよねー。すごい人間っていうくくりだよね。
 ウフコックが楽俊に似ていると思ってしまった人、私とお友達になりましょう(笑)