Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

畠中惠『ぬしさまへ』  ★★★

ぬしさまへ
ぬしさまへ
畠中 恵
 ため息も人がいないところで、こっそりと遠慮がちにつく。ただ妖たちにだけは、時々心掛かりをこぼすことがあった。
(それなのに、頼りの妖たちが突然いなくなったら、私はどうなるのかね)
 小さい頃からいつも変わらず一緒だったのに。


 『しゃばけ』に続く、シリーズ第二段。長崎屋の若だんな・一太郎の祖母は大妖で、その血が混じっている若だんなにも妖が見える。彼が五つの時、祖母が守りに寄越してくれた二人の妖・佐助と仁吉をはじめとする色々な妖たちや、砂糖菓子のように甘い二親、和菓子屋なのに餡を作るのが下手な栄吉などなど、おなじみのメンバーが登場する。
 ぬしさまへ:近所で火事が発生した間に、若い娘が堀で死んでいた。彼女は、仁吉に恋文を渡していた。
 栄吉の菓子:栄吉の作った饅頭を食べたご隠居・九兵衛が死んだという。若だんなが真相解明のため調べていくと、九兵衛の財産を狙っていた輩が浮かび上がる。
 空のビードロ:若だんなの兄・松之助は桶屋に奉公していた。奉公先の娘・おりんはどうしてだか、妙に松之助に優しい。
 四布の布団:最近買ったばかりの布団から泣き声が聞こえる。しかも、五布と頼んだのに四布だった。布団屋に抗議するという父と手代に若だんながついていくと、部屋で通い番頭が殺されていた。
 仁吉の思い人:寝込んでいる若だんなに薬を飲ませようと、仁吉は失恋話を始めることに。時は遥か彼方、千年も遡る。
 虹を見し事:いつも傍にいる妖たちの姿は見えず、鬱陶しいほど若だんなを甘やかし見張っている二人の手代の様子はおかしい。誰かの夢の中に入ってしまったのだろうかと考え、一人ずつ検証していくのだが……。
 前作より、面白くなっていた。若だんなと一太郎が混在しているのも最初の方だけだったような(確かではないが)? 文章もわかりやすくなったし、私好みの短編集というのもあり、結構楽しめた。『しゃばけ』は話を引き伸ばしていた感があったからなあ。
 ファンタジーとミステリのどちらにカテゴライズするか迷ったが、ファンタジーが少ないのでこっちに。『ねこのばば』も読んだらこっちにする予定。この調子で進むのなら、次も読むぞ。
 相変わらずカバーの絵がかわいい。屏風のぞきが仁吉だと思い込んでいたけど。ネットでファンイラストを見てやっと気付いたぜ。屏風のぞき、なかなか男前じゃないの。手代へ反抗する様子を見てると、もっと子供っぽいのかと。まあ私は仁吉大好きだけど! 恋文もらいまくりなのに千年かけて失恋、そのヘタレっぷりが愛しい。佐助は兄に欲しいな。寧ろセットで。
 一太郎、十七歳なんだよね。私より若いんだ。『しゃばけ』を読了した時は同い年だったのに……涙が。これからも病弱ながら皆のアイドルとして、頑張ってほしいと思います。