Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

有川浩『レインツリーの国』  ★★★

レインツリーの国
レインツリーの国
有川 浩
 実際に会っての取材に応じてくださった方が偶然にも私の本を全部読んでくださっている方で、「難聴者を主人公にして恋愛物を書く」と申し上げましたら、
「それはあれですか、自衛官が地雷処理とかで失敗して難聴になったりするんですか?」
 私の一般的な位置づけはすでにそこか!? とか思いつつ、それでも書けるなと一瞬思った私は相当終わっています。(あとがき)

 このあとがきには笑わせていただきました! 私も有川さんの本全て読んでるけど、登場人物はいつも肉体的戦闘を繰り広げているものね。陸・海・空の自衛隊や特殊部隊……戦う男女が格好よくていいんですわ!
 きっかけは「忘れられない本」そこから始まったメールの交換。あなたを想う。心が揺れる。でも、会うことはできません。ごめんなさい。かたくなに会うのを拒む彼女には、ある理由があった――。メディアワークス刊『図書館内乱』の中に登場する書籍『レインツリーの国』が実物となった。(Amazon
 ということで、先に『図書館内乱』を読んでいた私には大体の内容の予想はついていた。有川さんが真っ向から恋愛物を! と本を開くと主人公の伸行はこてこての関西弁じゃありませんか! これもまた新鮮。
 昔熱中した『フェアリーゲーム』というライトノベル。ネットをさまよってたら見つけた感想を読んで、それに同感した信行がメールを送り恋ははじまった……これ、独り身女性読書ブロガーの方々には羨ましくありません?笑 私はめっちゃ羨ましかったぞ。
 目次の文章がストーリーを思い起こさせるので、引用しますと、1直接会うのが駄目やったら、せめて電話だけでもどうかな。2「……重量オーバーだったんですね」3傷つけた埋め合わせに自信持たせてやろうなんて本当に親切で優しくてありがとう。4「ごめんな、君が泣いてくれて気持ちええわ」4歓喜の国、でした。
 伸行とひとみ、両者の視点が交互になって物語は進む。有川さんならではの心理描写がえぐいんだなー。善意があってこその皮肉の応酬といいますか。掘り下げて掘り下げて深層心理に到達してしまうというか。若竹七海とはまた別のタイプ。若竹さんよりも、さらに日常的な部分においての感情だな。苛々とか、むかつくとか、よくある感情。
 恋愛って、出会って惹かれあって結ばれるだけじゃないよね。喧嘩もするし、齟齬も生じる。別に、大きな障害が立ちはだかっているわけじゃない。ちょっとしたことが(この本の場合は大したことだけど)乗り越えられない。どうしても気に食わないところも出てくる。そんなことを思いました。
 このところ障害者が出てくる本をよく読むけど、最後には強かに生きていく様が描かれていることが多いので、励まされるなあ。障害を持った人たちの心理も痛いほど伝わってくるし。実際に書いているのは恐らく五体不満足な人なのですが……。その手のノンフィクションを読むとなると、精神状態が良好でなきゃだめかも。