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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

都築道夫『七十五羽の烏』  ★★☆

七十五羽の烏
七十五羽の烏
都筑 道夫
「犯罪の捜査ってのは、むずかしいね。それにしても、腹がへったな。犯罪の捜査は、とても個人の手には負えないよ。こっちはやはり、おばけ専門ということで、お茶をにごして、逃げだそう。腹がへったな。今夜、家のまわりをひと廻りして、霊的運動の徴候はない、これは人間のたくらみだ、とかなんとか、いいくるめられないかしら。ああ、腹がへった。腹がへったよ」
「まあ、なんとか、やってみましょう。腹がへったのは、ぼくも同様なんだから、我慢してくださいよ。いま支度をしているんです」
「我慢はしてるさ。ただ警部の前じゃいえなかったから、まとめていってるんだ。腹がへった。腹がへった。腹がへった。腹がへった」

 こんな探偵と助手です。かわいい。
 旧家に起こった殺人事件は、千年も前に怨みを残して死んだ姫君の祟り!? 登場するのはまったくやる気のない探偵、ものぐさ、いや物部太郎――。作者は文中で(見出しも含めて)、ひとつも嘘をつきません。そして事件解決の手がかりは、すべて読者の前に明示されます。鬼才が精巧に練り上げ、フェアプレーの精神で読者へ挑戦する本格推理ファン必読の傑作。(裏表紙)
 倉知淳『星降り山荘の殺人』は本書にインスパイアされてるらしいので、借りてみた。おどろおどろしいのかと思いきや探偵と助手のコンビが微笑ましくて笑ってしまいました。星降り~のように見出しが読者を煽る! しかし全く推理のできない(する気もない)自分! 本が勿体無いことだ。
 日本家屋の描写がさっぱり理解できなくて、日本人としてそれくらい勉強しといた方がいいのかな……と凹んだ。事件と全く関係ところで。家の間取りの絵が載ってるのに、頭にうまく描けない。まだ男性が「かしら」なんて語尾を使ってしまう時代、ってのは好きなんですけれど、どうも物語に入り込めなかった。大して長い話でもないのに何回か飽きてしまった。何でだろう……事件もトリックも解決も面白かったんだけどな。