Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

国内現代小説

津原泰水『たまさか人形堂物語』  ★★★★

たまさか人形堂物語 津原 泰水 祖母の形見の零細人形店を継ぐことになったOL澪。押しかけアルバイトの人形マニア、冨永くんと謎の職人、師村さんに助けられ、お店はそこそこの賑わいを見せていた。「諦めてしまっている人形も修理します」という広告に惹かれ…

梨木香歩『家守綺譚』  ★★★

家守綺譚 梨木 香歩 懐かしくなって再読。やっぱり『村田エフェンディ~』の方が上だなあ。私見ですが。

堀江敏幸『いつか王子駅で』  ★★

いつか王子駅で 堀江 敏幸 路面電車の走る町。「珈琲アリマス」と記された小さな居酒屋。隣で呑んでいた正吉さんは、手土産のカステラを置いたまま、いったい何処へ向かったのか? ―荒川線沿線に根をおろした人々とあてどない借家人の「私」。その日日を、テ…

堀江敏幸『熊の敷石』  ★★★

熊の敷石 堀江 敏幸 「なんとなく」という感覚に支えられた違和と理解。そんな人とのつながりはあるのだろうか。フランス滞在中、旧友ヤンを田舎に訪ねた私が出会ったのは、友につらなるユダヤ人の歴史と経験、そして家主の女性と目の見えない幼い息子だった…

津原泰水『ブラバン』  ★★★★

ブラバン 津原 泰水 大麻を隠し持って来日したポール・マッカートニーが一曲も演奏することなく母国に送還され、ビル・エヴァンスがジョン・ボーナムがジョン・レノンまでも死んでしまった、1980年(昭和55年)。醒めた熱狂の季節に、音楽にイカれバンドに入れ…

堀江敏幸『ゼラニウム』  ★★

ゼラニウム 堀江 敏幸 黒革レーシングスーツ姿で事故に死した女、頭の鈍い老婦人、黄色いワンピース姿のフィリピンメイド…。どこか変な女たちを静謐なユーモアで描いた短編集。標題作「ゼラニウム」を含む6篇を収録。(Amazon) 一文一文が私にはちょっと長…

本多孝好『正義のミカタ』  ★★★

正義のミカタ―I’m a loser 本多 孝好 いじめられっ子の亮太は自分を変えようと「正義の味方研究部」に入部する。果たして亮太は変われるのか。いじめ、リストラ、格差。こんな社会で生きていかなきゃならない、将来が少し不安なあなたに贈る、書き下ろし青春…

本多孝好『真夜中の五分前』  ★★

真夜中の五分前five minutes to tomorrow 本多 孝好 小さな広告代理店に勤める僕は、学生時代に事故で失った恋人の習慣だった「五分遅れの目覚まし時計」を今も使っている。その五分ぶん、僕は社会や他人とズレて生きているようだ。そんな折り、一卵性双生児…

梨木果歩『村田エフェンディ滞土録』  ★★★★☆

村田エフェンディ滞土録 梨木 香歩 町中に響くエザン(祈り)。軽羅をまとう美しい婦人の群れ。異国の若者たちが囲む食卓での語らい。虚をつく鸚鵡の叫び。古代への夢と憧れ。羅馬硝子を掘り当てた高ぶり。守り神同士の勢力争い―スタンブールでの村田の日々は…

本多孝好『チェーン・ポイズン』  ★★★★

チェーン・ポイズン 本多 孝好 誰にも求められず、愛されず、歯車以下の会社での日々。簡単に想像できる定年までの生活は、絶望的な未来そのものだった。死への憧れを募らせる孤独な女性にかけられた、謎の人物からのささやき。「本当に死ぬ気なら、1年待ち…

辻村深月『スロウハイツの神様』下  ★★☆

スロウハイツの神様(下) (講談社ノベルス) 辻村 深月 『スロウハイツ』二〇二号室。そこには、わたしたちの神様が住んでいる。人気作家チヨダ・コーキが暮らす『スロウハイツ』の住人たちは、平和な日々を送っていた。新たな入居者、加々美莉々亜がくるまで…

辻村深月『スロウハイツの神様』上  ★★☆

スロウハイツの神様(上) (講談社ノベルス) 辻村 深月 ある快晴の日。人気作家チヨダ・コーキの小説のせいで、人が死んだ。猟奇的なファンによる、小説を模倣した大量殺人。この事件を境に筆を折ったチヨダ・コーキだったが、ある新聞記事をきっかけに見事復…

瀬尾まいこ『戸村飯店青春100連発』  ★★☆

戸村飯店青春100連発 瀬尾 まいこ,小池アミイゴ 大阪の下町にある中華料理店・戸村飯店。この店の息子たちは、性格も外見も正反対で仲が悪い。高3の長男・ヘイスケは、昔から要領が良く、頭もいいイケメン。しかし地元の空気が苦手で、高校卒業後は東京の専…

森奈津子『先輩と私』  ★★★★

先輩と私 森 奈津子 女子大生・光枝は、好色文学研究会の一員。官能小説を書いては妄想に浸り、自慰に耽る日々。そんな折、ライバル団体であるエロティック文学研究会の会長・華代から、引き抜きの誘いを受ける。やがて華代のたくらみは度を越したものとなり…

森奈津子『姫百合たちの放課後』  ★★★★

姫百合たちの放課後 (ハヤカワ文庫 JA モ 3-3) 森 奈津子 女子校を舞台に繰り広げられる、少女たちの可笑しくも甘酸っぱい青春から、大人同士のディープな恋愛遊戯までを描いた「百合コメディ」8編を収録。団鬼六や女教師ポルノのパロディであるレズビアンSM…

森絵都『ラン』  ★★★

ラン 森 絵都 昨今の女流作家ランニングブーム(笑)があったから、これも男子中学生が陸上を頑張っている話だと思いきや主人公は22歳フリーター女性でした。系統としては『カラフル』の方。でも、スポーツとしてのランについてもさらっと触れている感じ。安…

佐藤正午『5』  ★★★☆

5 佐藤 正午 読むのは面白かったけど登場人物は好きじゃないな!笑 津田を見ていると私だって嫌いだわこんなやつと思いつつ、主人公だから肩入れしてしまった。あとあのふだつき追っかけも苛々するね。そこらへんは作者の力量ってやつ? 個人的には奥田英朗…

佐藤多佳子『神様がくれた指』  ★★★★

神様がくれた指 佐藤 多佳子 佐藤多佳子の小説で一番好きだった。『しゃべれどもしゃべれども』は何となく気に入らなくて、『一瞬の風になれ』は主人公の新二が気に入らなくて(笑)、でもこの小説は全員気に入った。辻と昼間の関係たまらん。キャラ読みなの…

本多孝好『ALONE TOGETHER』  ★★★

ALONE TOGETHER 本多 孝好 この頃から本多さんは「正義」とかを書きたかったんだな、ってわかった。『正義のミカタ』に繋がるものがたくさん出てくる。文章を書く良いドーピング剤になってくれました(笑)

角田光代『Presents』  ★★★☆

Presents 角田 光代 女性が一生の間に、親、友達、恋人、子供などからもらう様々なプレゼント。そのプレゼントをテーマにした12編の短篇小説を、年齢を追いながら角田光代氏が紡ぎ、イメージを膨らませた絵を松尾たいこ氏が描きます。ここに描かれているプ…

角田光代『八日目の蝉』  ★★★☆

八日目の蝉 角田 光代 書道の先生が貸してくれたのは年末じゃなかったろうか。 逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか――理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。家族という枠組みの意味を探る、著者初めての長篇サスペン…

三浦しをん『仏果を得ず』  ★★★★

仏果を得ず 三浦 しをん 新年初読み! しかも超タイムリー! 本書は元旦を迎えて物語が閉じるのです。嬉しいなあ。『あやつられ文楽観賞』を読んでから望みたかったけど、届きませんでした。残念。文楽を「ぶんがく」と読んでしまうような私が……三浦しをんに…

吉本ばなな『アムリタ(上)』  ★★☆

アムリタ〈上〉 (新潮文庫) 吉本 ばなな これはアテネのホステルの、下のベッドにいた日本人の女の子に「読み終わった本があったら貸してほしい」と申し出て借りたもの。その子は翌日帰国だったから、貰ってしまった。最初見たとき、既読だ! とがっくりして…

あさのあつこ『晩夏のプレイボール』  ★★☆

晩夏のプレイボール あさの あつこ あさのさんのネーミングセンスはちょっぴりDQNだな、と思っていたら、母にもそれを言われた。やっぱりそうか。あと、「あさのあつこって野球が大好きなんだね」と言うと「離れられないだけじゃない」だとさ。んー、確かに…

三浦しをん『きみはポラリス』  ★★★★☆

きみはポラリス 三浦 しをん 「俺の考える本物のロハスはこうだ」 と俊明が言った。「死期を悟った時点で富士山頂に上り、ご来光とともに切腹する」 「な、なんで」 「なんででもだ。そして己れの内臓をつかみだし、『有機栽培の礎とならんことを……!』と祈…

浅田次郎『月島慕情』  ★★★★

月島慕情 浅田 次郎 みんな、一緒に食べよう。少し冷めてしまったけれど、蜥蜴や蛆虫や、戦友の肉よりもずっとうまいぞ。そして腹が一杯になったら、今夜のうちに敵陣に斬りこんで、兵隊らしく死のうじゃないか。兵隊らしく、男らしく、人間らしく。(雪鰻)…

本多孝好『正義のミカタ』  ★★★★

正義のミカタ―I’m a loser 本多 孝好 「豊かさはそこまで行き着いちゃったのさ。自分は満足している。そのツギにはどんな欲求が生まれるか。他人の満足を否定したくなるんだよ。お前はそんなところで満足しているのか。俺はもっと上にいるぞ。その感覚がその…

荻原浩『四度目の氷河期』  ★★★

四度目の氷河期 荻原 浩 シベリアの氷河が溶けるように、事実が姿を現した、ぼくにはそう思えた。ぼくはすべてを理解した。自分が何者なのかを。 ぼくはクロマニヨン人の子どもだ。 「いいか南山、ふつうの人間なんて、どこにもいないんだよ。みんな少しずつ…

伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』  ★★★☆

フィッシュストーリー 伊坂 幸太郎 (略)「おい、おまえ、この子、どういう関係の娘さん?」などと問い質した。言葉に詰まり、狼狽する今村の様子を楽しんでいた。果たして何とお答えるのだろうか、と興味津々で、助け舟も出さず待っていると、今村はしばら…

北村薫『ひとがた流し』  ★★★

ひとがた流し 北村 薫 「――そんなわけでさ、男と女だったら、特に夫婦だったら、お互いとは別に、色んなタイプの相手を作られちゃあ困る。少なくとも、あたしは嫌だ。やってけない。――でもさあ、同性となると話は違う。外野守ってる子とか、内野守ってる子と…