Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

吉本ばなな『アムリタ(上)』  ★★☆

アムリタ〈上〉 (新潮文庫)
アムリタ〈上〉 (新潮文庫)
吉本 ばなな
 これはアテネのホステルの、下のベッドにいた日本人の女の子に「読み終わった本があったら貸してほしい」と申し出て借りたもの。その子は翌日帰国だったから、貰ってしまった。最初見たとき、既読だ! とがっくりしていたんだけど、『キッチン』と勘違いでした。よかったー。アテネの大きな公園のベンチで読んだ。
 妹の死。頭を打ち、失った私の記憶。弟に訪れる不思議なきざし。そして妹の恋人との恋――。流されそうになる出来事の中で、かつての自分を取り戻せないまま高知に旅をし、さらにはサイパンへ。旅の時間を過ごしながら「半分死んでいる」私はすべてをみつめ、全身で生きることを、幸福を、感じとっていく。懐かしく、いとおしい金色の物語。吉本ばななの記念碑的長編。(Amazon
 しかも不思議なことに、翌日一緒にアクロポリスを回ったイタリア人が「僕は日本の小説にすごく救われたことがあるよ。吉本ばななっていう作家で、イタリアではとても評価されているんだ。知ってる?」「知ってるも何も、昨日その人の本借りたばっかり。どんな話? 『キッチン』?」「『キッチン』有名だけど、僕が読んだのは女ばっかりの家族の話で……」「『アムリタ』! 私が借りたの、正にその本!」「すごい偶然だね!」ってことがありましてね。内容よりも思い出深い。
 吉本ばななは『TSUGUMI』が個人的ベスト。読んでると、女流作家って感じがぷんぷんするね。さらさら月の光が流れるようなイメージ。下巻も読むよ。