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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

北村薫『ひとがた流し』  ★★★

ひとがた流し
ひとがた流し
北村 薫

「――そんなわけでさ、男と女だったら、特に夫婦だったら、お互いとは別に、色んなタイプの相手を作られちゃあ困る。少なくとも、あたしは嫌だ。やってけない。――でもさあ、同性となると話は違う。外野守ってる子とか、内野守ってる子とか、キャッチャーやってくれる子とかさ、ただ観客席にいて、コーラ飲んで、ポップコーン食べて、無責任なこというだけの子とか、色々いていいんだよ。そうだろう?」


 序盤はものすごく退屈で、文章も馴染めなくて大変だった。後半にさしかかってわけのわからない急展開に翻弄される。急すぎやしませんか? と思ってたら最後はきっちり感涙。うーむ、北村薫さすが。でも私は相性がよくないみたい。
  アナウンサーの千波、作家の牧子、元編集者で写真家の妻となった美々は、高校からの幼なじみ。牧子と美々は離婚を経験、それぞれ一人娘を持つ身だ。一方、千波は朝のニュース番組のメインキャスターに抜擢された矢先、不治の病を宣告される。それを契機に、三人それぞれの思いや願い、そして、ささやかな記憶の断片が想い起こされてゆく。「涙」なしには読み終えることのできない北村薫の代表作。
 女性のぶっきらぼうな言葉遣いにもちょっと違和感覚えた。これは世代の差なのかしら。若竹七海の乱暴な女性の言葉遣いはわかるんだけどな。男女の差か。

 

「あの人、いつも気を張っていました。わたしや美々ちゃんに、会わなくなったのも、よく分かるんです。昔っからの友達に、乱れたところを見せたくなかったんです。きっと子供の頃から、――お母さんにだって、泣いてすがったりしなかったんだと思います。でも、――そういうトムさんだからこそ、本当の気持ちをぶつけられる人が、――現れて、良かったと思います」
 牧子は、うつむいてしばらく考え、また話し出した。
「これだけは、どうしても聞いておきたいんです。あの人も、我がままをいったり、怒鳴ったりしたんでしょう、そうすることが出来たんでしょう? ――だとしたら、わたしも救われます」