Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

中島たいこ『漢方小説』  ★★★

漢方小説
漢方小説
中島 たい子
「でも、二千年も病気を治してきたこじつけって、スゴイこじつけだよね」

 私の目的は恐らく、「病気を治したい」から一歩踏み込んで、「変化を恐れない自分になりたい」ではないだろうか。

 作者も実際に映画製作してるのねー。少し前に話題になったけど何だっけ? そうだ、芥川賞だ。二回連続ノミネートされるも受賞を逃したんだ。てか、芥川賞ってノミネートされるのは一回きりなのかと思ってた。無名・あるいは新鋭作家なら何回でもいいのかな? 二回がせいぜいか? 新しい方の、『この人と結婚するかも』という題名にはかなり惹かれるものがあるなあ。ストレートながらも斬新。結婚するかもって! 気になるー。
 自宅に本のストックがなくなったので大学の図書館へ。品揃え悪いくせに、たまに掘り出し物がある。しかも全て同じ人が寄贈してる。伊坂、本多、絲山、大島真寿美……素敵なラインナップで。これからもよろしくお願いしたいところです。ありがたや。
 川波みのりは三十一歳独身のシナリオライター。昔付き合っていた男が結婚するという話を聞いてから体を壊し、救急車で運ばれるまでに。いくつか病院を回ってみるもきちんとした診断を下してもらえず、彼女が辿り着いたのは漢方医。
 130ページほどで短い。心の病っぽくて一歩間違えたらシリアスな展開になりそうなのにどこか可笑しくて、軽やかにさらーっと読めてしまう。いわゆる負け犬(笑)女性が自分と向き合って健康を取り戻す、まあベタなストーリーですけれど良い意味で楽なんだよな。気を張らなくて済む。繊細すぎないのもよし。登場人物もがむしゃらに頑張ってる感はないしね。フルーツタルトとプリンと苺のエピソード大分好きだ!
 東洋医学、『鴉』読後だから、五行説は興味深い。臓器だけじゃなく、感情も木火土金水に分けられ、どれがどれに克つってのがあるんだねー。西洋医学のピンポイントで効く薬とは違い、体全体を健やかにするから効き目がゆっくりでも長持ちするんだとか。漢方か……肌荒れに効きそうだなあ。
 みのりが、男に癒されるつもりはないと言い切っていたのがかっこよかったです。