Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

トマス・M・ディッシュ『歌の翼に』  ★★★★

歌の翼に(未来の文学)
歌の翼に(未来の文学)
友枝康子
 歌をうたうことによって肉体から精神を解き放つこと、それが「飛翔」である。宗教と経済に支配され食料危機が慢性化した近未来アメリカにおいて禁止されている「飛翔」の魅力にとりつかれた少年ダニエルは、ある日突然アイオワの有力者の策略により刑務所へ、そこから彼の数奇な流転の人生がはじまる。やがて結婚、妻のボウアは「飛翔」したまま帰らぬ人となり、抜け殻となった妻とともにニューヨークへ向かう。オペラ劇場で働きはじめたダニエルは、人気歌手のレイと出会い、恥辱と快楽にまみれた生活をおくりながら歌手を目指し、ついに成功を手に入れるのだが…SFのみならずゲイ小説、教養小説、音楽小説などのあらゆる要素を投入しながら、支配する者とされる者の宿命、芸術の喜びと悲惨をエモーショナルに描く、奇才ディッシュの半自伝的長篇にして最高傑作がついに復刊。(Amazon

 最後はうええええ!? ってなったw まあアメリカ的と言ったらアメリカ的、なのかな。全体の雰囲気はとってもアメリカ的。最初から最後までずーっと面白くて先が気になるのでぐいぐい読めた。ディッシュ自身がゲイだということ、彼の本を読むたび(といっても二冊目)びっくりするのに、次の本を読むときには忘れれててまたびっくりするんだよな……ナチュラルにお稚児さんになってんだもん。あれ、私何を読んでたんだっけ、ハーレクインなBLだっけ……と一瞬思った(笑)肌を染めさせたり貞操帯させたりさ。なかなかすごいよね。
 そういえば「飛翔ものSF」というジャンルがあるのを初めて知った。色んなものがあるんだなあw これはSFっぽいガジェットが飛翔用機械くらいしかなくて(刑務所の脱出防止装置もか?)、あんまSFって感じはしなかったんだけど、ファンタジーだよって出されたら「いやSFだろ」って言うだろなw それ以上に立身出世の色合いが強いけど。まあカテゴリわけは無意味ですね。あ、ディッシュは二年前に拳銃(!)自殺しているらしい。何を思って自殺したんだろうか……翔べたのかしら。
 面白かったので復刊されてほんとによかったなあ。