Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

岡嶋二人『99%の誘拐』  ★★★

99%の誘拐
99%の誘拐
岡嶋 二人

 ――あなたは、私にとって、すばらしい宝物を手に入れるための道具なのです。あなたの命と引き替えに、私はあなたのおじいさまからたくさんのお金をもらいます。
「え?」
 兼介は、眉を寄せてパソコンを見返した。パソコンはまるで声のトーンを変えずに言った。
 ――あなたは、今日、誘拐されたのです。

 かなわないな……。


 「この文庫がすごい!2005」の一位になったみたいだね! おめでとう!
 いやー読みやすいなさすが井上夢人(名指しか)。とっても読みやすいし面白くてドキドキもする。一つ問題があるとすれば、今は2005年だということ。1988年と今ではコンピューター技術に天と地ほどの差があるので、意外性は全く感じられないんですね。それを抜かしても面白かったけど! 動機(といっていいものか)がさあ。素晴らしいよね。
 末期ガンに冒された男が、病床で綴った手記を遺して生涯を終えた。そこには八年前、息子をさらわれた時の記憶が書かれていた。そして十二年後、かつての事件に端を発する新たな誘拐が行われる。その犯行はコンピュータによって制御され、前代未聞の完全犯罪が幕を開ける。(Amazon
 倒叙ミステリ、って言っていいのかしら? でも全ての手を読者には明かしてくれていない。だから最後もちゃんとびっくり。

 

 幼い頃の慎吾を誘拐したのは葛原と間宮。この事件は迷宮入りして、会社は買収されちゃったんだよね。後に兼介を誘拐し、まんまとダイヤモンドをせしめた慎吾を犯人だと指摘するのは間宮。何とも言えないだろうなー。
 口の中に笛を仕込み、ボロボロになっても指示を送り続ける慎吾に天晴れ。口内の傷って痛いのよね。