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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

小川一水『復活の地 Ⅱ』  ★★★★☆

復活の地 2
復活の地 2
小川 一水

「ソレンス、人間にはな」
 デスクを回ったセイオが、血色の悪い頬を歪めてにやりと笑みを浮かべた。
「本当に疲れ切った時には、倒れるという機能が備わっているんだ。――その安全装置が働くまで、俺は動けるさ」
「……閣下のそれは壊れているのではないでしょうか」
「願ったりだ。行くぞ」

 綸言汗の如しというのは、君主の言葉は汗と同じように、ひとたび出れば戻すことができないという意味だ。君主は訂正できない。訂正すれば過ちを認めることになり、その絶対的な権威が揺らいでしまうからだ。

 篤志会に参加した人々は、ネリの目から見ると二種類に分かれる。地震で被害を受けた人を救ってあげようとする者と、被害を受けた人の努力を助けてあげようとする者だ。


 ふおー素晴らしい! どうして三巻も一緒に借りてこなかったんだ自分! この本が閉架だなんて間違ってる!
 行方不明のレンカ高皇にかわり摂政の位に就いたスミルは、一官僚であるセイオを帝国復興院の総裁に任命した。遠大なる帝都再生計画を掲げるセイオであったが、その強引なまでの政策は、サイテン首相率いる政府のみならず、救うべき市民たちの反感をも招いてしまう。復興院解体の危機が迫るなか、ダイノン、サランガナンなどの星外列強が、混乱する帝国に干渉の手を伸ばそうとしていた……。(裏表紙)
 今書いてる時点で三巻まで読み終えたので、口を滑らせてしまいそう。とりあえず面白いことは保障する。心から。
 国家を破綻なく形成させる上で、どのような体制をとるのが民衆にとって一番幸せなのか……ダイノンか、イングレスか、はたまたレンカかと言ったら、私が生きてきたうえで獲得した価値観に拠れば、ダイノンだ。被差別民が存在してはならない。全ての人が平等に生きていける国がいい。それを突き進めると社会主義になってしまうのかしら? 資本の偏りもなくさなければいけないのかしら?

 

 セイオは沈黙した。腹の中は怒りで煮えくり返っている。こちらは五十年先を見据えた帝都再興を考えているのに、目先の勝利などを望むとは、なんと度し難い連中なのだ。
(中略)
「おわかりください。私がしなければならないのは民衆の機嫌を取ることではなく、たとえ嫌がられても民衆の将来を考えてやることなのです」


 こんな考え方をしていたセイオが、

「底辺からの力というものを甘く見ていた。民衆は粘土のようなもので、腕力でこね上げて形を作らねばどうにもならないものだと思っていた。……その粘土に救われた」
「あなたはもともと弱者の味方ではなかったのですか」
「弱者とは何かを勘違いしていたんだな。それは意思がないということではないんだ。愚かということでも、被差別民だということでもない。それは……ああ!」
(中略)
「なんてことだ……シマック閣下のおっしゃった通りだ! 民意のみに殉じ、臣民の奴隷たること、それを誇れということか! 我が身ではなく!」


 目覚めるところは素晴らしいですね。