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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

小川一水『復活の地 Ⅲ』  ★★★★★

復活の地〈3〉
復活の地〈3〉
小川 一水

「そもそも差別という心理は、おのれより弱い者を必要とする自己の弱さから生まれます。それを克服するのは、自分の他の欠点をなくそうとすることと同様、努力によって可能ですよ」

「私は何物も惜しみません。帝都も、民衆も、自らの命も。しかし、ただ一つ恐れます。帝国人であれジャルーダ人であれ他の者たちであれ、惑星レンカに根付く人々がこの星から出ることなく果てるのを」

「みずから希望を打ち消すのは正しい行いかね? ――そうしてもなんの得もないのに」

「たった一人を助けられずして、帝都を救えるとお思いですか!」


 涙しながら読みきった完結編。セイオやスミル、その他代表的な登場人物、民衆、皆の努力が胸を打ちまして常に涙がじんわり出てくる状態。熱い……! ただ一つ気に入らなかったことがあるとすればそれは恋愛面の都合のよさですが(彼はロリコンなのだろうか)それ以外に非の打ち所がありません。あ、あと一つあったわ。でも読むべき。
 小川一水の本を十冊ほどしか所有してない上に、閉架扱いの我が地元図書館。こうなったらとことんリクエストしまくって全部揃えさせてやろうじゃないの(絶版は無理か)
 皇権排除を画策するサイテン首相は、スミルらを襲った大規模余震を機に国家権力を掌握、星外進出を見据えた軍備増強を推進していく。いっぽうセイオのもとには、100日後の第二次震災発生という衝撃の情報がもたらされる。復興院総裁という権力を失った彼が、“予知された災害”に対して講じた方策とは? そして、迫りくる国家崩壊の危機に、摂政スミルがくだす最後の決断とは?(裏表紙)
 Amazonのレビューを見ていて、確かに根っからの悪人は存在しなかったなあと気づいた。……そうね、悪人いないわ。でも、国家の復興を推し進めるために奔走し開眼する(笑)人々を見ているのはとても楽しいし、応援したくなるし、読者を惹きつける点においてやっぱり私は素晴らしいと思う。
 この本の明確な敵というのは、自然災害(ってことにしとこう)である地震だ。地震は怖いし、阪神淡路大震災のような事態は起こってほしくない。でも、自然災害と認定したのなら、「打ち克つ」とか「戦う」という表現はどうなのかと。自然VS人間ってのは近世?のヨーロッパ的考えかなって。自然と共存していく方を採りたいから、違和感を覚えた。まあ、地震の正体を考えると、戦うしかないかもだけど。

 

「一度だけだ」
 低い声が首筋をくすぐる。
「一度だけ、他のすべてを捨ててあなたのところへ来た。――それでいいか」
「充分です……」


 二人が結ばれることなど望んでなかったのに涙が出たわ……。