Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

谷崎潤一郎『春琴抄』  ★★★★☆

春琴抄

春琴抄

 

九つの時に失明し、やがて琴曲の名手となった春琴。美しく、音楽に秀で、しかし高慢で我が侭な春琴に、世話係として丁稚奉公の佐助があてがわれた。どんなに折檻を受けても不気味なほど献身的に尽くす佐助は、やがて春琴と切っても切れない深い仲になっていく。そんなある日、春琴が顔に熱湯を浴びせられるという事件が起こる。火傷を負った女を前にして佐助は―。異常なまでの献身によって表現される、愛の倒錯の物語。マゾヒズムを究極まで美麗に描いた著者の代表作。(Amazon

 十年前、大学生だった頃にオタクの友達に「これはすごい」と言われて文庫版を読もうとして2ページほどでリタイアし、そのままになっていたのを本日Kindleで見つけて読みました。変態でした。わたし谷崎は『痴人の愛』しか読んでないながら(あと『細雪』も途中で放り出した)、自身の性癖をこんなにも完璧に近い形で小説化していることに敬意を覚えます。あっぱれ。さすがマゾヒズムの大家と呼ばれるだけある。短いのでオタクはとりあえず読んでおくべき。

 あえて句読点と改行を省いている文体のため、初見では読みにくいんだけど、iPhone6の小さい画面でだとあまり気にならなかった。文体がなあ、と思っている人は試してみるといいかも、著作権切れで無料だから。ただKindle版は解説がないのが物足りない。