Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

ジョージ・オーウェル『一九八四年』  ★★★★☆

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。二十世紀世界文学の最高傑作が新訳版で登場。(Amazon

 友達が日本から来るときに持ってきてもらった。有難うございました。

 中身は、頭の悪いことを言うと、頭の良い人が書いた現在(当時)批判と未来実験的SF。思っていたよりものすごくSFしていた印象。わたしがSF寄り読者だからそう捉えてしまうのかもしれないけど、書き方自体は文学的とは思いませんでした。ただオーウェルの頭のよさはひしひしと伝わってきたよ。その上、解説がピンチョンだからな。

 まったく古びていないどころか現代日本かと思ってしまうな。教養をつける目的で読んだけれど、すごく面白かったわ。

稲森和夫『稲森和夫の実学 経営と会計』  ★★★

稲盛和夫の実学―経営と会計

稲盛和夫の実学―経営と会計

バブル経済に踊らされ、不良資産の山を築いた経営者は何をしていたのか。儲けとは、値決めとは、お金とは、実は何なのか。身近なたとえ話からキャッシュベース、採算向上、透明な経営など七つの原則を説き明かす。ゼロから経営の原理と会計を学んだ著者の会心作。(Amazon

 財務畑の友達に、財務の入門書教えてください! とお願いした一冊。

 読みやすくて素人にも優しい本でした。最初から最後まで読みやすかった。稲森さんの人となりが伝わってくる文章になっていた。うちも経費を下げなければ……下げられるところは分かってるんだからちゃんと決済を通してコストダウン達成したいと思いました……。

 しかしこの人、この年で2000年代から結構な本を出してるのすごいな。人に書かせるにしても大変だろうに。さすがバイタリティあるぜ。

服部まゆみ『この闇と光』  ★★★★

この闇と光 (角川文庫)

この闇と光 (角川文庫)

森の奥に囚われた盲目の王女・レイアは、父王の愛と美しいドレスや花、物語に囲まれて育てられた…はずだった。ある日そのすべてが奪われ、混乱の中で明らかになったのは恐るべき事実で―。今まで信じていた世界そのものが、すべて虚構だったのか?随所に張りめぐらされた緻密な伏線と、予測不可能な本当の真相。幻想と現実が混ざり合い、迎えた衝撃の結末とは!?至上の美を誇るゴシックミステリ!(Amazon

 すごいお勧めしたい層がいるのだけれど、その点を言ったらネタバレになるというジレンマww これはあらすじすら読まないまま中身を読んでほしいですね。短いし読みやすいからサクッと衝撃の結末を知れるよ。ゴシックミステリ……いや……何も言えぬ……笑

 巻末の解説は皆川博子です。彼女が書いている時点で惹かれる人はいるだろう! 分かるだろう!! 何も考えずにとりあえず読むと良いよ。教養は大事だよ(最終的な結論)

 下記は盛大なネタバレ。

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國貞克則『財務3表実践活用法』  ★★☆

財務3表実践活用法 会計でビジネスの全体像をつかむ (朝日新書)

財務3表実践活用法 会計でビジネスの全体像をつかむ (朝日新書)

決算書は「企業経営の成績書」といわれるが、実は過去を振り返るだけでなく、ビジネスの構造や将来を考える材料としても使える。累計50万部突破の「財務3表シリーズ」第3弾。「理解」から「分析」、そして「実践活用」へ。あなたの会社の事業で即、使える。全ビジネスマン必読。(Amazon

 評価できるほど分野について詳しくないんだけども。自著の宣伝が多すぎるのはどうにかならんかったのかね。笑 一番伝わって来たのは、この人ドラッガーが好きなんだなあ……ということでした。各章の冒頭にドラッガー紹介が挟まってるんだぜ!? どんなこと言ってる人なのか全然知らなかったので、ふ〜んと思いながら読みましたが……。

 オリンパスの話は面白かったです。素人に分かる程度の説明だけ書いておいてくれるところが優しい。この手の本を数冊読んだので、基本用語は何となく頭に入ったかな〜。売掛金の回収をきっちりやるまでが営業の仕事、というのは本当にもっともです、身にしみます。ここをほっといたら真面目にキャッシュが足りなくなる組織で働いている。

 ビジネス書は全て弟の買った電子書籍をアカウント共有して読んでいるのだが、表と説明文を比べながら読むことが難しいので、本気で勉強したいときは紙で買わねばいけないのだなと思う。

山根節『経営の大局をつかむ会計 健全な“ドンブリ勘定”のすすめ 』  ★★★

経営の大局をつかむ会計 健全な”ドンブリ勘定”のすすめ (光文社新書)

経営の大局をつかむ会計 健全な”ドンブリ勘定”のすすめ (光文社新書)

財務諸表をアバウトに見るだけで、次の戦略が見えてくる。楽天ソフトバンクはなぜ何期も赤字を続けても成長するのか? ソニーはなぜ行き詰まったのか? トヨタ、セブン‐イレブン…、大企業はすでに金融業になっている。経理マン、会計士が絶対に教えてくれない経営戦略のための会計学。(Amazon

 私にはこの本の専門的妥当性はさっぱり判断できないんだけど、読み物としては飽きずに読み進められる内容。短いし。仕事上必要に迫られているので、とりあえずふんわりとした知識や用語だけでも……と思って手を出しました。BSとPLをサイズ感で掴むのはわかりやすくてよかったです(真面目に小学生並の感想)

 ただし10年も前の本なのでトレンドはまったく移り変わっているし(シャープ……! 色々あって大損を引っ被ったシャープ!)、ITについては門外漢なんだなあという感じはする。あとジェンダー的にどうなのって部分は大いにある。洋菓子の練習問題の「その前に嫁を探さないとですね」という締めには脱力した。

グレッグ・イーガン『プランク・ダイヴ』  ★★★★

プランク・ダイヴ (ハヤカワ文庫SF)

プランク・ダイヴ (ハヤカワ文庫SF)

地球から遙か遠宇宙のブラックホール“チャンドラセカール”では、ある驚異的なプロジェクトが遂行されようとしていた。果たして人類は時空の構造を知り得るのか?―ローカス賞受賞の表題作、別の数学体系をもつ並行世界との最終戦争を描く「暗黒整数」、ファースト・コンタクトSFの最高峰「ワンの絨毬」ほか、本邦初訳作品を含む全7篇を収録。現代SF界最高の作家の最先端作品を精選した日本オリジナル短篇集第4弾。(Amazon

 ようやく読んだ。イーガンって感じでした。『ひとりっ子』読んだの2008年だから当然覚えてなかったよ……まさか続編がこんなとこに載ってるなんて……。2008〜09あたり、SFを読もうキャンペーンをやっていたのだと思われる。オーストラリア出身ってことすら読み始めは忘れていたわ。あの頃出ていた本は全部読んだのか。我ながらよくわからん趣味だな。10月発売予定の三部作に手を出すのはしんどそうだけど『白熱光』『ゼンデギ』は読んでおこうかな。

 ハードSFの先鋒を走っている(まだそうなのだと思う)イーガンが、それでもすごく読みやすいのは、文学的なメタ構造を作り出すことはしない……ほとんどしないような気がする……からかなあと思いました。この状態でボルヘスみたいなことやられたらもう手がつけられない。でもイーガンは、フィクションの内部で更なる次元を作ることはあっても、外側よりも内側に作り込むタイプのようなので、何と言うか、物語性が強い感じがする。端的に言えばバカにも読みやすい。笑

「グローリー」や「プランク・ダイブ」はかなり読み飛ばしながら読んだけど、それでも中心のテーマは何とか分かるように書かれているので、こっちのガチさの方がまだマシ!(比較対象:ソラリス)いやソラリスソラリスでよかったんですけど……。まあ英語圏なので最低限の教養がないとやっぱなあ、というのはある。いいかげんシェイクスピアを読まなくてはいけないよな。

 イーガン、読書に時間がかかって暇つぶしになりそうという理由で買ったのに、なんで今日一日で読み切っちゃったんだろう。変な意地を起こすのではなかった。哲学やりつつエンタメ忘れない精神が感じられて、リーダビリティあるんだよな。

スタニスワフ・レム『ソラリス』  ★★★☆

惑星ソラリス――この静謐なる星は意思を持った海に表面を覆われていた。惑星の謎の解明のため、ステーションに派遣された心理学者ケルヴィンは変わり果てた研究員たちを目にする。彼らにいったい何が? ケルヴィンもまたソラリスの海がもたらす現象に囚われていく……。人間以外の理性との接触は可能か?――知の巨人が世界に問いかけたSF史上に残る名作。レム研究の第一人者によるポーランド語原典からの完全翻訳版。(Amazon

 オールタイムベストを高評価できないの、自分のバカさの表現でしかなくてつらい。

 ずっとレムはロシア人なのだと思っていたらポーランド人とな。沼野さんはロシア語の翻訳のみならずポーランド語のもやっているのか……2言語はどのくらい似ているのだろう……。SFの古典だから、名前だけはもちろん知っていて、でも内容についてはビタイチ知らなかったんだけど、そういう本って「こんな話だったのか〜」という感想が第一に来てしまうんだよなw コンタクトもの(一言でいうならこれしかないようだ)のハードSFでしたかー。本当に知りませんでした。

 メタSFの部分は正直初読で頭に入ってこなかった……笑 イーガン的なものならまだいけるんだけど、ボルヘス的というか、一つの体系だった学問として描かれると入り込むのが大変だ……。コンタクト部分は面白かったんですけどね。難しい構造を自力で読み解く力がないもんでね。

 沼野訳はかなり直訳っぽいところがあるけど、私はへたに熟れた超訳をされるよりは原文が透けて見える方が好きです(スラブ系言語まったくわからないけど)。昔の版はかなりカットされてるみたいだもんね。実はブックオフで買ったやつが手元にある。比べる気にはならないw

 とりあえず相当昔からの積ん読を消化したので気持ちはいいです。

 

ピエール・ルメートル『その女アレックス』  ★★★★

その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)

おまえが死ぬのを見たい―男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。(Amazon

 面白かったです。読み始めたら止まらない系だから、みんな寝る直前に読むのはやめような。

 感想としては、お疲れ様でした! もうネタバレを避けて言うことがあるとしたらお疲れ様でしたしかない。お疲れ様でした……安らかにお眠りください……。お疲れさまと、ぶっ殺してやりたいと、アルマンGJってところですかね。アルマンのドケチ描写は犯罪の域に達していたのでラストはよかったです。こういうのあると帳消しになるんだよ。笑 あとルイは絵に描いたようなホイホイでした。

 構成が大事な話だから何も言えないのだけれど、文章的にはあっさり目で嫌味ったらしい言い回しもない(翻訳のせいもあるかもしれない)から、解説にあったような「描写が細かく繰り返しが多い」のが気にならず、テンポは速いままです。シーンの切り替え方やちょっとしたカットが挿入されるところ、すごく脚本っぽいな〜と思った。エンタメとしてもストーリーの核心も大変面白かったけど、小説としての好き嫌いを問われたら星四つかな。

 フランスの警察・司法まわりの予備知識皆無なので、予審判事というものが、逮捕段階からこんなに現場レベルで関わってくるのか〜と面白く読んだ。この人がオーケー出したら突入しなきゃいけないし被疑者の拘留も一存なんだ? あと階級社会がはっきり出てるの、これはイギリス文学もそうだ、ルイの人柄が「家族の遺産だ」って言われているじゃないですか。まあ生まれ育ちがはぐくむものって明らかにあるよね。これだけの教養はもちろん、ハビトゥス、思考……。聞き込みに行った先の人の描写が、ウッドハウスなんかとほぼ変わらないわけですよ。何かねえ〜。そのへんと比べたら日本なんて全然ゆるいけれど、これはWW2であらかた燃えたからかね? 前は日本でも華族とか爵位とかあったよね?

 あともう一歩でブラヴォ!!! だったのがとても残念だから(わたしの感情的に)、代わりにアレをぶっかけにいきたいよ〜。もうサクッと。サクッとやろうぜ!!! もう!! 許さん!! ああなっても許さんぞ! ブラヴォと言い切ってもいいのかもしれないけど!! これは最高の結末かもしれないけどさ! でも私は言いたくないんだ!

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ロビン・ウィリアムズ『ノンデザイナーズ・デザインブック』

 小説ではないので★は無しで。

 とても面白かったです(こなみ)。これの日本語フォントバージョンがあったらすごくいいんだけどなあ。巻末にちょっぴり補足がついてたけど。ノンデザイナー的には、整列の仕方なんかは大変参考になるんではないか。ま、わたしは紙面を組むことはないけどな!!笑 パワポくらいかな! いっつもメイリオ使ってるけど! あとこないだ新刊でOld Styleの欧文フォントとモダンっぽい日文フォント使ったけど、コントラストのためには日文はゴシックのがよかったんだろうなーとか。今後表紙の文字入れする際には参考にします。

「Times、Arial、Helvatica、Sandを使わないこと」と100回くらい出てくるの、日本語であればMS明朝や創英角体ポップを使わないこと、なんだろうなw Helvaticaに至っては「Helvaticaはだめ!」という見出しがつけられるほど憎まれていた。

津村記久子『ミュージック・ブレス・ユー!!』  ★★★★☆

ミュージック・ブレス・ユー!! (角川文庫)

ミュージック・ブレス・ユー!! (角川文庫)

  同じく何度目か分からない読了。三人称背後霊視点を書くときに読み返したくなる本。

 アザミは自分で言うほど(能力的に)「どうしようもない」人間じゃないと思うけど、こういう考え方になるときはある。「他人が普通にやってることも満足にできないのだ」「他人と趣味両方を持ってるのが一番、他人を持ってるのが二番、趣味しかないのが三番」とか、『君は永遠にそいつらより若い』のホリガイが「私に会いたいと思う人間なんていないと思って生きてきた」とか。それは逃避だとも思うんだけど、そういうのはあるよな。……っていうあたりが純文学で芥川賞なんだろうな。

 作家の読書道、面白かったのでぜひ。専業になられたんですね。