津村記久子『君は永遠にそいつらより若い』 ★★★★★
- 作者: 津村記久子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2009/05/11
- メディア: 文庫
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十回目くらいの『君は永遠にそいつらより若い』を読み通して、何度読んでもいい小説だと思った。何度も書けるようなもんじゃないだろうが、津村さんがまたこういう密度の高い切実さのある小説を書いてくれないかなと常に思っています。
川上弘美『いとしい』 ★★★
- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2000/08
- メディア: 文庫
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「好きになるということは、好きになると決めること」母性より女性を匂わせる母と、売れない春画を描く義父に育てられた姉妹ユリエとマリエ。温かく濃密な毎日の果てに、二人はそれぞれの愛を見つける。高校教師になった妹マリエは教え子のミドリ子の兄と恋に落ちるが、ミドリ子の愛人は母の恋人だった…。芥川賞作家が描く、傑作恋愛小説。(Amazon)
文章があっさり目で、未成年少女と成人との性行為は出てくるけど不倫は一応なくて、思想的にも家父長制控えめなので比較的読みやすい部類かなと思います。しっかりおとぎ話系だけど。……川上弘美、一部除いてすごく好きじゃないんだよ!笑
江國香織も思想的に全然合わないしたまにものすごい地雷を仕掛けてくるんだけど、でも好きで、川上弘美はどちらかというと嫌い枠だけど、文章は美しいよなと思っています。ついでに小川洋子も合わないけど好き寄り! 文章好き度は江國香織の三人称>小川洋子>川上弘美の順。小川洋子は自分のフェチまっしぐらなところ少し好感が持てますよね〜。
江國香織『なつのひかり』 ★★☆
- 作者: 江國香織
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1999/05/20
- メディア: 文庫
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日本から持ってきた。もちろん主要登場人物は不倫している。
唐突に終わったなあ。読むの2度目だと思うんだけどラストはさっぱり覚えてなかった。毎度のことながら記憶喚起力は素晴らしく高いな。
皆川博子『アルモニカ・ディアボリカ』 ★★★★☆
- 作者: 皆川博子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/12/19
- メディア: 単行本
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18世紀英国。愛弟子エドらを失った解剖医ダニエルが失意の日々を送る一方、暇になった弟子のアルたちは盲目の判事の要請で犯罪防止のための新聞を作っていた。ある日、正体不明の屍体の情報を求める広告依頼が舞い込む。屍体の胸には“ベツレヘムの子よ、よみがえれ!アルモニカ・ディアボリカ”と謎の暗号が。それは、彼らを過去へと繋ぐ恐るべき事件の幕開けだった。『開かせていただき光栄です』続篇!(Amazon)
いやーつらかった。面白かった。しかしつらかった。何を言っても前作からのネタバレになるので何も言えないがつらかった。胸がいっぱいになった。泣いた。
皆川博子が2013年、つまり83歳のときにこの話を連載していたというの、驚愕しかない。現時点ではこれが最新作の模様。
つらいつらいと言いながらの読書だったけど、ストーリーとキャラクターがよかったからつらいんであって、ものすごくよかったので、ぜひ皆様読んでください。『開かせていただき光栄です』と2冊セットで読まなくてはダメです。24年組に漫画化してほしい。
日本人が書く日本以外の話って実は苦手なのだけれど、特に違和感なく楽しく読んだ。時代物だしね。フランスと戦争したりアメリカ独立戦争してたりの18世紀イギリスが舞台。つらい(語尾)
以下完全にネタバレだよ!!
続きを読む津原泰水『猫ノ眼時計』 ★★★★
- 作者: 津原泰水
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/07
- メディア: 単行本
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頼むから早く文庫になってほしい。アイダベルの話は好きだ。
津村記久子『エブリシング・フロウズ』 ★☆
- 作者: 津村記久子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/08/27
- メディア: 単行本
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最後の方パラパラだけど読みきった。いつものように「子供として与えられた環境の中で生きてくのしんどいけど子供だから思い切った抜本的処置ができない」といった内容なので、暗い。
この内容をこの長さで書くのは間違いなのではないかと言いたい。半分の長さにしたらまだよかったのでは? 津村記久子の男性主人公は強い感情をほとんど持たない流され型で、彼女の文体ではつまらなくなるな、という思いを深めただけの読書だった。
津村さんて、基本的にはベターっとした平坦な文章で人の行動と思考を綴っていく人だから、主人公の考えていることに切実さを感じたり興味が持てなかったりすると、とたんに面白くなくなるわけなのよ。んで男性視点の話はどうにも切実さが足りんのよね。だからつまらない。
これから入ってつまらない作家だと思われるのすごい嫌なんだけど……でもこれはつまらない……。『君は永遠にあいつらより若い』『ミュージック・ブレス・ユー!』『ポトスライムの舟』『アレグリアと仕事はできない』あたりを読んでください。
江國香織『金平糖の降るところ』 ★★☆
- 作者: 江國香織
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2013/10/08
- メディア: 文庫
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ブエノスアイレス近郊、日系人の町で育った佐和子とミカエラの姉妹は、少女の頃、恋人を“共有する”ことを誓い合った。姉妹は日本に留学して、佐和子は大学で知り合った達哉と結婚する。ミカエラはアルゼンチンに戻り、父親のわからない娘アジェレンを産む。実は達哉は、佐和子が姉妹で“共有する”ことを拒んだ唯一の男性だった。いまは地球の反対側に住む姉と妹だったが、佐和子は突然、離婚届を残して、アルゼンチンへと旅立つ。後を追う達哉だったが、佐和子には逃避行をともにする若い教え子の田渕がいた。東京から南米ブエノスアイレス、華麗なるスケールで描いた恋愛小説。(Amazon)
悪趣味だなー。笑 結婚という契約を結んでおきながら、了解を得ずに配偶者以外の他者と性交渉を持つことが、配偶者に関係ないという理論はわたしにはさっぱりわからんわ。あと『がらくた』同様未成年に手を出す成年(もちろん妻子持ち)というのはわたしはどうしても許容できない……。
佐和子が達哉の舌打ちに対して「(問題は)そんなことなのよ」というのはすごくわかる気がする。「舌打ちは相手に対する侮辱よ。そしてね、それはたっちゃんの愛の言葉そっくり。知ってた? そのこと」ひえーこわい。
津原泰水『たまさか人形堂それから』 ★★★★☆
- 作者: 津原泰水
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/05/24
- メディア: 単行本
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今日だけで既に2度読み通しているのだが、つくづく登場人物たちが愛おしい。いい本だ。きっと三部作だろうので、次を楽しみに待っています。
中山可穂『愛の国』 ★★★★★
- 作者: 中山可穂
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2014/03/01
- メディア: 単行本
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弾圧の暗い影、獄中のタンゴ、刻み込まれた愛の刻印。愛する人も記憶も失い、自分が何者なのかを問いながら彼女は巡礼路を歩き続ける。十字架を背負い、苛酷な運命に翻弄され、四国遍路からスペインの聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへ。衝撃のデビュー作『猫背の王子』から20年―底なしに愛し、どこまでも闘う主人公ミチルに待ち受ける愛と死、罪と罰、天国と地獄を渾身の筆で描ききった恋愛小説の金字塔!王寺ミチル三部作完結篇。(Amazon)
これぞ作家としてのエネルギーを詰め込みまくった「遺作」(あとがきより)だわ。こんなん書いてこの先も書き続けることができるのかね。王寺ミチル三部作、最後を飾るにふさわしい壮絶な愛の洪水をぜひ一気読みしていただきたく。誰にともなく。笑
全てのつまったデビュー作を超える本を書くのは並大抵のことじゃないと思いますが、これまで文壇で戦い続けてきた(んだろうな、レズビアン作家としての自分の地位を)歴史あっての集大成だと思います。政治色がかなり強いのは、書かねばならぬと思って書いているのかね。インタビューとか読まないとわからんわ。今更ながら執筆お疲れ様でした。
気になるのは、「子供を産んでこそカップルであり、それができない女同士は物足りない」的価値観。これは他作でも出てくるので、著者自身の根底にあるのではないかと思う。子供がいないカップルをたくさん書いている(しかし関係性が常にホラー)ヘテロ作家の江國香織と同時並行で読んでいると、結構違和感があるわ。レズビアンカップルであっても、精子バンク等を利用して子供を持つことは不可能じゃないのに……。この小説内では不可能だけどさw
エンタメ系の読書をしているときの、文章を文章と認識せずにひたすら先を急いでストーリーを追っていく感覚が大好きだ。ここまでくると文体は邪魔になるんだと思う(中山さんは心情描写がたっぷり目だけど文章自体の癖は無い方じゃないかな)。この本を読んでいる最中ほんとうに幸せだった。小説を読む楽しみってわたしの場合はだいたいストーリーテリングのうまさな気がするな……小説愛を再確認してきた本リスト、ちゃんと作っておけば良かったかな……愛の国の一つ前は都会と犬どもなんだよ。
星五つは三部作全体の評価ということで。
追記、友達に面白いよと言われたので読みました。
すごい面白かった。この人、インタビューに答えるだけでドラマチックになっちゃうんだ。まだまだ書いてくださいそうなのが嬉しい。中山さんは物語を書いてなんぼだと思うし、ノワール小説が発売されますように。
柚木麻子『終点のあの子』 ★★★★
- 作者: 柚木麻子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/04/10
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プロテスタント系女子高の入学式。内部進学の希代子は、高校から入学した奥沢朱里に声をかけられた。海外暮らしが長い彼女の父は有名なカメラマン。風変わりな彼女が気になって仕方がないが、一緒にお昼を食べる仲になった矢先、希代子にある変化が。繊細な描写が各紙誌で絶賛されたオール讀物新人賞受賞作含む四篇。(Amazon)
こっちこそYAに出して中高生に希望を与える……与えられるのかはわかんないけど広く読まれるべきなのでは。面白かったです。(田舎の私立のカトリック系お嬢様高に通った)わたしの高校時代ではなかったけども。この作者、津村記久子と同世代なんだよねー。
女子高時代、ヒエラルキーはもちろんあったものの確固たるものではなかったし好きな人となんとなくつるんでいただけ、と今でも思ってるし一部の子とは続いてるけど、漏れなく1年次の同級生なの、たぶん多くの人がそうみたいなんだけど……などと十年以上前のことをしみじみと思い出してはあそこは平和な箱庭であったなあと感心するのでした。次は中山可穂の愛の国読みます!
ちなみに作者で言うと江國香織を読むと必ず家族と住んでいた頃の記憶を掘り起こされるので、やはり上手いんだろうな……と思う。