森奈津子『からくりアンモラル』 ★★★★
からくりアンモラル
森 奈津子
美花に触れた瞬間、強烈な快感が押し寄せてきた。
あの行為の最中だわ!
思わずわたしはシャーペンを放り出し、床に転がった。手足の力が抜けて、まるで軟体動物になってしまったみたい。(一卵性)
調教型セクサロイドの悲しいところはね、どんなことでも性的な意味がある行為を受ければ、たちまちそれを快感に変化させてしまうことなんです。
(中略)
だけど、どんな辛い行為でも、初めて経験するたびに、あたしの体はそれを新たな快感として覚えてしまうんです。あさましいものですよ。
え? 精神的な喜び? そんなものは、ありませんよ。(レプリカント色ざんげ)
この人の書くエロスが大好きだな。おバカなのは『西城秀紀のおかげです』、狂気や哀愁を伴う(?)のは本書。
官能小説めいたものにおいて、性器をどの言葉を用いて表現するかというのはとても重要な点だと思うんだけど、少なくとも小学生が使うような言葉はさっぱりそそられないので(それならペニスとかヴァギナとか言ってくれ)、森さんがそれらを用いていないのはありがたいです。まあ、ちと少女趣味な気もするが。(美)少年少女やアンドロイドが生々しさをカット、しかしエロスはしっかりキープ。『耽美なわしら』で我慢のならなかった、勢い込んだ台詞(笑)がなかったのも大変ありがたい。小説のテンションが違うとはいえ、あれは読みにくかったから下巻未読……。
からくりアンモラル:姉・秋月、妹・春菜。クリスマス、二人に贈られたのはそれぞれチワワと家庭用ロボットだった。秋月はヨハネと名づけられたロボットにちょっかいを出しはじめる。
あたしを愛したあたしたち:十二歳の藍子のもとに突然現れたのは、タイムトラベルをしてきた未来の自分たちだった。
愛玩少年:新人類は、旧人類を唯一のエネルギー源としている。吸血鬼の彼らは食事をしないが、血を吸わなくとも、セックスを行うことでもエネルギーを摂取することができる。
いなくなった猫の話:スナックのママ・小夜は、かつて猫系ハイブリッドの男の子を育てていた。ハイブリッドはヒトよりも早く年を取る。
一卵性:美花と美樹は一卵性双生児だ。美樹は美花の感覚や感情をストレートに感じることができる。かつては互いに共有していたのだが、いつからか美花はそれを拒み始めた。
レプリカント色ざんげ:百六十年前に製造された、商売女のレプリカント。かつては男だったが、色々あって今は女だ。
ナルキッソスの娘:私は父が13歳の時の子供。パートナーの女性をころころ変えて、愛すべき男ではあるが、まったくもって信用できない男でもあった。
罪と罰、そして:アサギは美園の人形。アサギが行ってきたいやらしい記憶を、美園と共有させられる。
無理だーあらすじなんて書けない。とにかく読めば良いです。
私は「あたしを愛した~」「一卵性」「レプリカント~」あたりが特に好き。我ながらわかりやすいな。多分、同性愛や自慰や執着といったものに惹かれるんだと思う。あたしを~は、エロエロだと思いきやそれを生の理解に繋げてしまうところがさすがだ(笑)
皆さんじっくり味わうといいです。すごいなー。