Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

岡嶋二人『クラインの壷』  ★★★★☆

クラインの壷
クラインの壷
岡嶋 二人

 呑み終えた時、そこには何が残るのだろう。皮膚と胃袋が裏返しになった自分の姿だろうか? それとも、なにもかもが消え失せ、それでも呑み足らないと思い続ける意識だけになってしまうのか?

 神! 岡嶋二人は神ですよ! 「驚愕の結末」は予想を斜め上回る結末でした。そうくるか! そこまでやるか! 信じられん。『99%の誘拐』『そして扉は閉ざされた』と本書、彼らの後期の三傑作の中でも私は一番好きだ。やべー。恐ろしいほどの読みやすさと素晴らしい謎。これがあるから読書はやめられないんだ。ラブミステリ。ミステリは読書の楽しみを教えてくれる。楽しいという言葉が何よりもしっくりくる。井上夢人の本も好きだけど、やっぱり二人合わさって作った作品の方が閃きがあるっていうか……どちらにしてもマーベラス。ってのが昨日読み終わってすぐの率直な感想。
 上杉明彦がゲームの原作として応募した作品『ブレイン・シンドローム』は、「クラインの壷」と呼ばれる疑似体験ゲーム機を使って、イプシロン・プロジェクトがゲーム化することに。上杉はテスターとしてゲームをプレイしてほしいと言われた。アルバイトで雇われた高石梨紗と一緒に。はじめは楽しんでいた二人だったが、段々と雲行きが怪しくなり、梨紗がいなくなってしまう。梨紗の友人・七美と真相を探る上杉だが……。
 「クラインの壷」に入ると、スクリーンに映すべき映像を網膜に直接写し、五感の全てが現実そのままに感受される。こんなものが発明されちゃったら、他人なんていらなくなっちゃうかもね。最近エヴァのアニメをちょっぴり見たけれど、真実と現実は別で、現実とは自分がそう思っている世界が云々、と言っていました。ってことは、壷に入って体験している世界を現実としても構わないわけで……上遠野浩平の著作を思い出した。
 ミステリというかSFっぽいとこもあるね。ミステリが多くを含みすぎて、何ともカテゴライズしにくいです。  ピアスと名刺をヒントに、上杉はゲームと現実の境目を見つけ出す。ゲームの被験者として、イプシロンは何人も死人を出してきた。梨紗も犠牲になった。結局事務所はどこなのか? 潜り込んだ彼は、七美と怪しげな薬をかがされ意識を失くすが――そう、ここまでがゲームだったのだ! 信じられない!
 ゲームの範囲が段々と広がっていくのよね。最初は『ブレイン・シンドローム』のシナリオだけ、次に梨紗と硝子を削って外を覗いたり彼女の電話を受けたりしたところ(上杉がいつ寝たか記憶にないところ)、そして最後には七美という存在も含め、全てがゲームだと。しかも、たったの一時間で六日間を体験しちゃう。
 そうだったのか、すっきり! と納得したら、あのラスト。冒頭の意味不明な部分を忘れていたんだよね。上杉は自殺してしまうのか……。ひー。