Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

松村栄子『雨にもまけず粗茶一服』  ★★☆

雨にもまけず粗茶一服
雨にもまけず粗茶一服
松村 栄子
「お兄ちゃんに言われたくないな。修行は面倒くさいとか贅沢できないからいやだとかお茶やってるなんて恥ずかしくてひとに言えないとか、それでうちほっぽらかして出てったひとが偉そうなこと言わないでよ。言っとくけど、ボクは誰にも迷惑かけてないよ。(中略)ボクはね、それを人生の意味にしようって言ってるんだよ。お兄ちゃんみたいに無責任じゃないよ。責任を背負おうとしてるんだよ。すごくおっきな責任だよ」

 WEB本の雑誌でいつだか評判がよかったので借りてみた。……半年以上昔の話ですが。ずーっと頭の片隅にあって、やっと予約したんだよね。表紙が可愛い。読もうとしている本の書評は先入観をなくすためになるべく読まないようにしているので、ちょっとした時代小説だろうかと見当外れな想像をしていた。いやいや。れっきとした現代青春小説ですがな。
 弓道、剣道、茶道を伝える坂東巴流の嫡男である遊馬(あすま)。言うところの「自分探し」をするために家出をし、京都の畳屋に居候することに。近所の寺の坊さんや、個性豊かな茶人達に出会いながら遊馬はだんだん馴染んでいく。弟・行馬やお目付け役の弥一やカンナ、父・秀馬に祖父・風馬と家族の皆さんも強烈。
 中でも上記の台詞を言ってのけた行馬はすごい。かっこいい。びっくりした。これじゃあ遊馬はかなわないだろうなあ。目指すものがでかいし。
 茶道の世界がちょっぴり身近に感じられるようになった気がする。てか、一度やってみたいなあなんて。専門用語というか、京言葉もわんさか出てくるから読みにくいところもあったんだけど、何となく気の抜けた雰囲気はよかった。きちんと点ててもらったお茶を飲んでみたいなあ。京都行きたい。方言って羨ましい。