Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

小野不由美『黒祠の島』  ★★★★

黒祠の島
黒祠の島
小野 不由美
 江國香織『すいかの匂い』を少しずつ読んでいるのだが、どうにも面白みがない(失礼!)ためのめりこめない。だからといって初っ端から男女の絡みだった『柔らかな頬』を進める気にもなれず――男が二人称であなたを使うの嫌いなんだもん――ここは小野不由美に頼るしかない! と昨日から読んでいたこの本。『屍鬼』から二年ぶりに世に送り出した、彼女にとって初の本格ミステリらしい。ネットで感想を見回る限りそこまで高い評価は受けていないのだが、私は大好きだね。もう小野不由美の本が大好き。
 本格ものということで、きっちり解決してくれている。有難う(まだ麻耶を引きずっているらしい)! 証拠隠滅された式部は島民にあたって事件を掴んでいくしかないのだけれど、色んな可能性を見つけては潰されていくところで貴志祐介『硝子のハンマー』を思い出した。……待って、全然違うのはわかってるから! 地道な調査という点だけ! 泰田の立ち位置は『屍鬼』の敏夫と静清をミックスさせた感じよね。途中で彼が若いことを忘れ、実年齢を知ってびっくりしてしまった。そっか、まだ二十代か(だからどうってわけでもないが)。
 罪と罰の考察が興味深かった。『屍鬼』では善と悪、『東亰異聞』光と闇? 新と旧かな、そんな対立する二つのものをどっちもどっち(?)の結論を下しているよね。どちらが正しいとか、きっちりと二分することはできないっていうか。堂々巡りになってしまうけれど、彼女が主人公と対立する立場に置かれる人(悪役や黒幕、アウトサイダー)に語らせる言葉はいつも真剣に読んでます。しかし私は人間は全てどーしよーもないと決め付けているところがあるから、どこか投げやりかもしれぬ。