綾辻行人『最後の記憶』 ★☆
――あれはヒトの血の色。
……ああ、母さん。あいつが来る。こんなところにまで、僕を追いかけて。
――あれはヒトの血の。
母さん、あいつが来るよ。あなたの記憶の中から溢れ出した“恐怖”が、もうすぐここに。今度はきっと、この僕の身体を切り刻むために。
ひと言でいうとぐだぐだ。主人公がまたも(夏と冬~に続いて)暗い。同じ事を何度も言ってる。でも、館シリーズでしか綾辻を知らない私が言うことだけれど、キャラクターが記号ではなかった。きちんと立ってました。しかし暗い。自分が彼のような目にあったらきっとぐだぐだ悩むのだろうけど、もう分かったから、と思うほかない。バッタはもういいから……(笑)!
母が初老期痴呆と診断された僕・波多野森吾は、それが遺伝性で自分もそのうち惚けるのではないかと心配でたまらない。大学の同級生だった唯に背を押され、僕は母の生い立ちを探ることに。幼い頃に酷い目に遭ったらしく、バッタの飛ぶ音と雷鳴を極端に怖がっていた母の――。
ミステリじゃなくてホラーだった。後書きで、「ホラーだから未解決な部分もあっていい」みたいなことを言っていたが、充分解決されているのではないか。夏と冬~に比べれば、さあ!(ひきずるなあ)
くどかったので評価は低め。今度はもっとあっけらかんとした小説を読みたい。しかし『柔らかい頬』を手に……桐野夏生がドロドロしてないわけない。最近沈みがちなのはそんな本ばっかり読んでたからか。そうか。
母にトラウマを植えつけたのが実の息子だったとはね。異世界。しかし何よりも、僕の周りで消えて行った塾の子供たちが帰ってこないってのが怖い。怖いですよ綾辻さーん。