Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

桜庭一樹『少女には向かない職業』  ★★★

少女には向かない職業
少女には向かない職業
桜庭 一樹

 ――強くなりたいな。
 そしたら、こんなに泣かないし、無抵抗の山羊を殴ったりしないし、ママに向かってバカなんて言わないだろう。
 強くて優しい大人になりたい。力がほしい。でも、どうしたらいいのかな?


 作者は女性だったのか! 少女ばっかり書いている男性かと思いました。本の雑誌WEBでインタビューが載ってて、驚いた。あの少女っぽさは女性のものなんだね。
 学校では元気なお調子者の葵は、家に帰ると無口になる。母は「あんたのために~」と責めてくるし、父はアル中のぐずで、血が繋がっていない。夏休みに入り、葵は同じクラスの宮乃下静香という少女(さつじんしゃ)に出会った。静香が教えてくれたのは「ぜったいみつからない人の殺し方」。
 章のタイトルがおもしろい。用意するのはすりこぎと菜種油です、と静香は言った/What's your poison?/宮ノ下静香の告白/用意するものは冷凍マグロと噂好きのおばさんです、と静香は言った/用意するものはバトルアックスと殺意です、と静香は言った、となってる。殺意ってのがいいね。
 親に養われている少女っていうのは身体的にもどこまでも無力な存在で、でも大人になったからと強く優しくなれるわけじゃない。
 ライトノベル作家として知っていたけど未読だった。有名だよね。実は全然期待していなかった(ごめんなさい)んだけど、普通に面白かった。少女の一人称だからすごく読みやすいし。『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』が気になっているので探してみよう。

 

 葵は浩一郎さんを殺し、静香とさまよってるところを刑事のおじさんに見つかってついに自首。私達を捕まえて、という台詞で終わっています。その後どんな波乱を呼ぶのかは想像するしかない。