Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

川上弘美『どこから行っても遠い町』  ★★

男二人が奇妙な仲のよさで同居する魚屋の話、真夜中に差し向かいで紅茶をのむ「平凡」な主婦とその姑、両親の不仲をじっとみつめる小学生、裸足で男のもとへ駆けていった魚屋の死んだ女房…東京の小さな町の商店街と、そこをゆきかう人々の、その平穏な日々にあるあやうさと幸福。短篇の名手による待望の傑作連作小説集(Amazon

 息をするように配偶者以外と関係を持つ、川上さんがよく書く設定があんまり好きではない、というか明白に苦手だなと思った。いわゆる浮気や不倫それ自体はどうでもいいのだけど、三人以上がいて、そのうち一人が何も知らされていないという状態が苦手。それはフェアじゃないと、そもそも存在しないんであろうフェアネスを、フィクションにおける性愛関係にはしばしば求めてしまう。皆知ってて普通に暮らしているんならむしろ好ましいんだけども、そうじゃないのはダメみたいだな。元々あまり合わないけど、この人の文章が読みたくなるときがあってたまに読んでいる。