Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

G.ガルシア=マルケス『わが悲しき娼婦たちの思い出』  ★★★★☆

わが悲しき娼婦たちの思い出 (Obra de Garc〓a M〓rquez (2004))
わが悲しき娼婦たちの思い出 (Obra de Garc〓a M〓rquez (2004))
ガブリエル・ガルシア=マルケス,木村 榮一

 これまでの幾年月を表向きは平凡な独り者で通してきたその男、実は往年夜の巷の猛者として鳴らしたもう一つの顔を持っていた。かくて昔なじみの娼家の女主人が取り持った14歳の少女との成り行きは…。悲しくも心温まる波乱の恋の物語。2004年発表。(Amazon


 マルケスに関しては「愛小説」とでもカテゴリ化したいです。
 これ一番好きかも! ってまだ四冊目だけど!笑 章の数字が書いてあることにびっくりしてしまった。おお、あるやつもあるんだ……。冒頭に川端康成の一節が引用されてます。口に指つっこんじゃいけませんよ、ってやつ。これも読んでないのよね。
 主人公は九十歳のおじいちゃん。冒頭の一文がまたすごくて、「満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと考えた」。す、すげー。マルケス作品の老人方はご立派な性欲をお持ちでおられるなあといつも感心する。本書はマルケス七十七歳の作品らしい。
 何がよかったって、解説に書いてあるけど明るい話なことだよね! うら若き処女に恋わずらって、最終的にはヤッホーっていうか、まあ、そんな感じで……(笑)息が切れるまで全身にキスをしたってのがエロくて好きだ。いいねいいね、あえてご立派な一物を使わなくても全然いいと思うよ。
 応九十歳ですから、恋わずらいは狂気ってほどじゃないし、その発露も比較的(他作品と比べれば)穏やかなもんで、こっちも穏やかに読めた。んーこれすごい好きだなあ、ローサ・カバルカスが粋で、少女も嫌な思いをしてないしさ。このくらいの短い話好きだなあ。女性の台詞がいちいち素敵。
 あと木村さんの訳文美しいと思ったけど(コレラ時代もこの人)、百年の孤独・愛その他の悪霊のときにあまり注意して読んでなかったから、マルケスがすごいのか木村さんがすごいのかは分からない。新潮社の全集の装丁が好みすぎるからその影響という可能性も十分にありうる(笑)集めたいわ。