Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

夏目漱石『三四郎』  ★★☆

三四郎 (岩波文庫)
三四郎 (岩波文庫)
夏目 漱石
 何か消化不良。解説で言われているようなあっさりしたラストは逆に木の実なんだけど、そこに至るまでが結構長かったので割に合わないと感じる。あの全てのエピソードは必要だったのかな? 長さの分だけカタルシスや盛り上がりを欲してしまうのは悪い癖かもしれないけれど。
 大学入学のために九州から上京した三四郎は東京の新しい空気のなかで世界と人生について一つ一つ経験を重ねながら成長してゆく。筋書だけをとり出せば『三四郎』は一見何の変哲もない教養小説と見えるが、卓越した小説の戦略家漱石は一筋縄では行かぬ小説的企みを実はたっぷりと仕掛けているのだ。(Amazon