Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

宮部みゆき『龍は眠る』  ★★★☆

龍は眠る
龍は眠る
宮部 みゆき

「もしも高坂さんが僕だったら、僕みたいなガキで、まだ世間のことなんかよくわからないのに、見たくもないし聞きたくもないものを知る力を持って生まれちゃったらどうする? 見えるんだよ? 聞こえるんだよ? そしたら――自分のできるかぎりのことをして、見たこと聞いたことをどうにかしなきゃって思わない?」


 いやあ、面白かった。ページターナー。昨晩『理由』が日テレで映像化されてた(途中までしか見てないけど結構忠実じゃなかった?)宮部みゆき。さすがだわ。文庫で500ページ越えと割と長めなのに漢字率も低く、読みやすさは抜群。会話文がくだけてて好き。会話まで肩凝ってると、息抜けないから。
 嵐の晩だった。雑誌記者の高坂昭吾は、車で東京に向かう道すがら、道端で自転車をパンクさせ、立ち往生していた少年を拾った。何となく不思議なところがあるその少年、稲村慎司は言った。「僕は超常能力者なんだ」。その言葉を証明するかのように、二人が走行中に遭遇した死亡事故の真相を語り始めた。それが全ての始まりだったのだ……。(Amazon
 超能力者とその苦悩。ありがちといえばそうよね、貴志も『ISOLA』で書いていたし(どっちも主人公イイコだし)。最近読んだのは井上夢人『風が吹けば~』なので、ただ超能力といえどもかなりの広がりがあるなあと思った。
 超能力……誰でも一度は使えたらなあと憧れを持ったことがあるであろうそれを持ったばっかりに、普通に生きられない少年達。私は実際にお目にかかったことはないので、信じているとは言えない。疑われることが運命なんだろう。本物でも忌み嫌われたりするし、やっぱり普通が一番なのかしら。
 主な登場人物は、語り手・高坂昭吾、サイキック(?)稲村慎司・織田直也、声が出せない三村七恵。同僚の生駒や元恋人・小枝子も重要か。どうでもいいんだけど、あさのあつこ福音の少年』に似てない? オヤジ未満の男一人に少年二人。そこだけじゃん! と突っ込みたくなるのはもっともなんだが。うん、ちょっと考えてみただけ。あと少年が好きなだけです。
 回りくどいという意見もあるように、私としては恋愛要素はなしでもよかったのではないかと。もともとミステリに恋愛が絡んでくるのは苦手なとこがある。
 全体としてはすごくいい。エンターテインメントってこういうのじゃないかな。わくわくして、先が見えなくて。楽しいばかりじゃないけれど、それがまたよし。

 

  マンホール事件からはじまるけれど、軸は、川崎と秘書が組み小枝子殺害が狙いだった脅迫・誘拐事件。慎司は高坂に送られてきた白紙の脅迫状を触って裏を読み、殺害を防ごうとするのだけれど自らが負傷、テレパシーで直也に託したところ直也はもみ合っていて誘拐実行犯を殺してしまった。殺害の意思が明らかにできなくなったので、テレポーテーションを使い犯人をよそおう直也。最後には死んでしまう。
 切ないなあ。本書は所有してるのであまり感想を書く気がしないなあ(笑)