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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

井上夢人『風が吹いたら桶屋がもうかる』  ★★★

風が吹いたら桶屋がもうかる
風が吹いたら桶屋がもうかる
井上 夢人
 いつだって、そうなのだ。
 ヨーノスケの超能力が人の役に立ったためしはないし、理屈屋イッカクの推理がなにかを解決したこともない。
 結局、こうなるのだ。

 この読みやすさは異常。連作短編集で、全てが同じ進み方・オチなんだけど、それでも面白いからすごい。とりあえず全部読んでしまうか、という気分になる。だって読みやすいんだもん!
 牛丼屋でバイトをする大学生シュンペイの同居人ヨーノスケは〈超能力〉の持ち主で、次々と不思議な事件解決の依頼が舞い込むのだが。心地よい展開のユーモアに満ちたミステリー。(Amazon
 風が吹いたらほこりが舞って:麻生千佳は、行方不明になったボーイフレンドを探して欲しいという。彼がバイトで家庭教師をしている子の父親はカレー専門レストランの社長なのだが……。
 目の見えぬ人ばかりふえたなら:宇田川織絵は、死んだ叔父と話がしたいという。彼は「ホッタさんが、織絵なら」と臨終の際に口にしたのだが……。
 あんま志願が数千人:笈川聡子は、二階のトイレから赤ちゃんの泣き声と、男の人の声が聞こえてくるという。彼女は録音した霊の声を持ってきたのだが……。
 品切れ三味線増産体制:杵淵泰世は、息子の命の恩人の女性を探し出して欲しいという。彼女がくれた人形が手がかりなのだが……。
 哀れな猫の大虐殺:敷島尚子は、ヨーノスケがインチキだと断言する。彼女はそれを証明するために、ヨーノスケにからくり細工の中身を透視させるのだが……。
 ふえたネズミは風呂桶かじり:滝沢朋美は、自宅で歩ポルターガイストまがいのことが起こっているという。植物の記憶から真実を引き出そうとするのだが……。
 とどのつまりは桶屋がもうかる:松原亜紀は、友達がいなくなってしまったので見つけてほしいという。その友達は上司との不倫が原因で会社を馘になったそうだが……。
 あらすじも同じ法則に従ってみました(楽だったから)。ヨーノスケの超能力は趣味程度の、ちょっとしたもの。イッカクは論理詰めで鮮やかに事件を解決したかと思えば、想像力が逞しすぎてしまうみたい。シュンペイはいつだって女性に縁がないし食いっぱぐれるし。愉快な三人が共同生活してるのね。楽しそう。