Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

三浦しをん『白蛇島』  ★★

白蛇島
白蛇島
三浦 しをん
「逃げ出したい場所があって、でもそこにはいつまでも待っててくれる人がいる。その二つの条件があって初めて、人はそこから逃れることに自由を感じられるんだ」

 自分も島を離れようとしているくせに、他の誰かが光市を残して島から立ち去ることを考えると、許せないと思ってしまう。離れてもつながっていられるのは悟史だけなのだ。他の人間が光市を捨てることなど許されない。ましてやそれが、光市が選んだ人間ならなおさらだ。

 図書館にいつもは品薄な三浦しをんが沢山あった。未読だった本書まであったので飛び上がりたい気持ちを抑えて抱きかかえる。耽美・男のペアが出てくる、ってことだけは知ってた(活字倶楽部の所為だ)ので変な期待をしていた(笑)そしてしをん氏はその期待に応えてくれました。耽美だ。
 閉鎖された村、昔からのしきたりなど、どこはかとなく小野不由美を連想。『屍鬼』『黒祠の島』あたりね。そんな重すぎるイメージを持ってちゃだめだった。あれは別格だ。まあ、あとがきにある通り「誰かが何かの束縛や呪縛から逃れる」というのがテーマらしいので、それを考えると全然違うんだが。
 このあとがきがとてもいいですね。黒く重々しい表紙で、話に合った文体や描写で、暗いが暗すぎない(光市がかなり貢献していると思われる)雰囲気を作っているのに、あとがきでは何のその。いつもの三浦しをんだ。登場人物のその後が書かれているのも、しかもそれが幸せそうなのも、ポイント高し。私も光市の幸せを願ってるよ!