Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

麻耶雄嵩『あいにくの雨で』  ★★★

あいにくの雨で
あいにくの雨で
麻耶 雄嵩

海援隊の歌にあったよな、信じるのを恐れるより裏切られる方がいいって。おまえもそう思っているかもしれないが、大した目に遭っていないから、あんな甘いことが云えるんだ。俺はあの日以来、人間らしく生きることにした」


 麻耶、久しぶりすぎる。調べたら二ヶ月ぶり。講演会があるから、夏休み中に著作全て読むことが宿題だったのだが、まだ11冊中5冊。無理だ。幹事長は全て二回ずつ読み直したらしい。流石。
 かつて殺人があった廃墟の塔で再び殺人が! 発見者は高校生・烏兎(うと)、獅子丸(ししまる)、祐今(うこん)。死体はその事件の犯人と目され、逃亡していた祐今の父親だった。現場には、塔にむかう雪上の足跡ひとつ。そして三たび殺人は起こった。繰り返される、犯人の足跡がない密室殺人の真相は? 麻耶雄嵩、正面から雪の密室に挑戦!(Amazon
 意外だった。麻耶が学園もの(語弊がありそうだ)を書くなんて! 男子高生! 背が高く痩身の黒ずくめで切れ者! 長時間車に乗っているとぐったりしてしまう体力のなさ……獅子丸がツボでした(わかりやすい)。
 翼から続くシリーズだと思いきや、メルカトルも出てこないしリンクが全然ない。兎烏は烏有の弟らしいけど、そんなこと書いてあったっけ……? 読み飛ばし多すぎですか。これは翼のように比喩が多用されているわけでもなく、烏有が語り手のやつとは違ってあそこまで暗くぐじぐじ悩まないし、今まで読んだ中で何よりもとっつきやすかったから(特に地の文!)きちんと読んだつもりだったのに。くそお。
 兎烏と獅子丸は生徒会の内偵機関のメンバー。こんなに生徒会が権限を持っている高校なんて、桜蘭高校(ホスト部という漫画)くらいじゃないか。他にあまり娯楽がないからこういうことに走るのかしら(失礼だ)。支配欲、ねえ。
 謎の全容は普段と比べ見渡しやすい。私は最後の黒幕は突き止められなかったわけだが、伏線の張り方や裏の設定のありがちさ(?)のお陰でちょっとした優越感を味わうことが出来た。まあ、誰でもわかることだけどさ。
 後味は、悪いです! 麻耶作品の例に漏れません(笑)! しかし好きなのは、終わり方であり、決着のつけかたであり、わからないところはわからないままと言っても夏と冬とは比べ物にならないくらいすっきりしてるからです! 男子高生……? あはは。

 

 獅子丸……その人間として大切なものが欠落した考え方も含め、好きです(笑)