Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

あさのあつこ『透明な旅路と』  ★★

透明な旅路と
透明な旅路と
あさの あつこ

「ここで死んでもいいと思っているんですか。自分を犠牲にして、おれたちを救ったとでも思っているんじゃないでしょうね。もしそうなら、それって、独りよがりの自己満足ですよ。わかってます?」


 携帯サイトで連載されたものを、本にまとめたらしい。あさのあつこ初のモダン・ミステリーと銘打ってはあるけれど、これはミステリーよりもホラー? バッテリーやNO.6シリーズを読んできて、主人公=少年になってしまった私。本作の主人公は中年男性でしたよ。とはいえ、怪しげで生意気な美少年は登場するし、句読点は多めだし、一文一文が短いし、人の心に切り込むし、あさのあつこらしさは健在。
 吉行明敬は、白い頸を絞めて女を殺して逃亡している途中、少年・白兎と少女・和子(かこ)に出会う。そして兄妹ではない彼らをなりゆきで家まで送り届けるはめになってしまった。夜になったので三人は、とある旅館に泊まる。チェックアウトし、車を走らせているとパトカーが見え……。
 白兎はきっとさぞかしかわいいのでしょうねえ、と思いながら読んだ。うふふ。あさのさんの書く少年が好きです。ちょっとあやしげなあの場面も好きでした。エロティシズム。
 全てがすっきりするわけじゃないけれど、ファンタジーもしくはホラーだからいいよね(ミステリーではないと言い張る)。評価は普通と言わざるを得ません。あとはネタバレで。

 

 明敬は女を殺していなかったみたいよ? しかもその女、かこだったみたいよ? よく分かりませんでした。かこがずっと前に死んだんだろう、ってことくらいは分かってたけど。白兎は死神と天使を混ぜたようなものかしら? まあいいや(いいのか)。