Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

島田荘司『夏、19歳の肖像』  ★☆

夏、19歳の肖像

夏、19歳の肖像

 

バイク事故で入院中の青年が、病室の窓から目撃した「谷間の家」の恐るべき光景! ひそかに想いをよせる憧れの女性は、父親を刺殺し工事現場に埋めたのか? 退院後、青年はある行動を開始する——。青春の苦い彷徨、その果てに待ち受ける衝撃の結末! 青春ミステリー不朽の名作が、著者全面改稿のもと新装版として甦る。(Amazon

 なぜいま突然島田荘司を読んだかというとですね、わたし最近K-POPにハマりまして、好きなアイドル(元EXOメンバー)が主演決定したっていうのを島田御大自らTweetしていて。

 これは読んでおかねばと、Kindleにあったのでワンクリックでポチったのですが。……ですが。

 Amazonレビューにあるように『異邦の騎士』系統の青春小説なんだよ。短いから何を言ってもネタバレになってしまうけど、若かりし頃にやらかした恥ずかしい思い出系なんだよ。19歳の夏の思い出を15年後に振り返って、俺はバカだったけど誇らしくもあるよ……ってやるやつ。ミステリではないがドッキリはある。

 でもね、これ書かれたの1988年なわけよ、主演アイドルが生まれてすらいない、携帯電話もポケベルもない時代の話でね。小道具のみならず、ジェンダー観も相当だし、2015年に読んだらどうしようもなく色あせてしまうところがあるんですよ。登場人物皆性格破綻してるし(これは作者のカラーかもしれない)。

 ほんっとに何でこの小説を現代中国で映画化しようと思ったんだよwww

 もーほんとにわからない。中国(都市部)は日本よりよっぽどスマホ大国でしょう、まあ政治レベルでは共産主義なので、ジェンダー観が多少古くても良いのかもしれないし(とはいっても職場における女性の進出は日本より数倍進んでいる、共産主義だから)、うん、でも、この小説のどこが監督を動かしたのか全然わからない……初心で馬鹿な青年の恋心が散る様を描きたいのかな?? でももっと他にいい題材があるんじゃないかな?

 島田さんが推しアイドルのことを好意的に紹介してくださっているのは大変感謝なのだが、後書きでご自身がおっしゃっている、「いったいこの未熟で下手クソで、しかも老獪な文字群は何なのであろう」、わたしは個人的に異論なくですね……いや勢いはすごくある、一気に書いたんだろうなって思うし、島田さん自身もお若かったのが伝わって来る……でも『異邦の騎士』には喜んだわたしにも、これは、女性を描いていると言う点で更に評価が辛口に……。ストーカー行為をそれと自覚していない主人公、かなりホラーですよ。

 散々言いましたすみません。しかし黄子韬にオファーが来た理由は分かりました。あの子も、少なくとも外に見えている部分は頭が良いとは言えない(婉曲表現)、非常に子供っぽい、わがままな性格だと思いますので。主演情報を聞いた直後は「演技大丈夫かな?! ミステリだけどシリアスな声とか出せるのか!?」と心配してしまったけれど、完全没問題、いつも通りに振る舞えば主人公になれます。よかったよかった、結果オーライ。

 全然関係ないけど、松浦理英子が1987年に『ナチュラル・ウーマン』を刊行したのがいかに偉業だったか感じ入ってしまった。いやはやまったくすごいよ。

 下記ネタバレです。

 

 惚れた女性が埋めていたのが父親ではなく愛人の子供の遺品だった、とネタバレされたときのアイドルの表情を見るために映画館に何度も脚を運びたい。「パパなんて呼ぶの、やめてくれ!」という台詞をそのまま中国語で言ってもらいたい。彼が演じるのだと思って読むと青春小説ではなく完全にコントである。超面白い。