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Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

中山可穂『愛の国』  ★★★★★

愛の国 (単行本)

愛の国 (単行本)

弾圧の暗い影、獄中のタンゴ、刻み込まれた愛の刻印。愛する人も記憶も失い、自分が何者なのかを問いながら彼女は巡礼路を歩き続ける。十字架を背負い、苛酷な運命に翻弄され、四国遍路からスペインの聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへ。衝撃のデビュー作『猫背の王子』から20年―底なしに愛し、どこまでも闘う主人公ミチルに待ち受ける愛と死、罪と罰、天国と地獄を渾身の筆で描ききった恋愛小説の金字塔!王寺ミチル三部作完結篇。(Amazon

 これぞ作家としてのエネルギーを詰め込みまくった「遺作」(あとがきより)だわ。こんなん書いてこの先も書き続けることができるのかね。王寺ミチル三部作、最後を飾るにふさわしい壮絶な愛の洪水をぜひ一気読みしていただきたく。誰にともなく。笑

 全てのつまったデビュー作を超える本を書くのは並大抵のことじゃないと思いますが、これまで文壇で戦い続けてきた(んだろうな、レズビアン作家としての自分の地位を)歴史あっての集大成だと思います。政治色がかなり強いのは、書かねばならぬと思って書いているのかね。インタビューとか読まないとわからんわ。今更ながら執筆お疲れ様でした。

 気になるのは、「子供を産んでこそカップルであり、それができない女同士は物足りない」的価値観。これは他作でも出てくるので、著者自身の根底にあるのではないかと思う。子供がいないカップルをたくさん書いている(しかし関係性が常にホラー)ヘテロ作家の江國香織と同時並行で読んでいると、結構違和感があるわ。レズビアンカップルであっても、精子バンク等を利用して子供を持つことは不可能じゃないのに……。この小説内では不可能だけどさw

 エンタメ系の読書をしているときの、文章を文章と認識せずにひたすら先を急いでストーリーを追っていく感覚が大好きだ。ここまでくると文体は邪魔になるんだと思う(中山さんは心情描写がたっぷり目だけど文章自体の癖は無い方じゃないかな)。この本を読んでいる最中ほんとうに幸せだった。小説を読む楽しみってわたしの場合はだいたいストーリーテリングのうまさな気がするな……小説愛を再確認してきた本リスト、ちゃんと作っておけば良かったかな……愛の国の一つ前は都会と犬どもなんだよ。

 星五つは三部作全体の評価ということで。

 

 追記、友達に面白いよと言われたので読みました。

 すごい面白かった。この人、インタビューに答えるだけでドラマチックになっちゃうんだ。まだまだ書いてくださいそうなのが嬉しい。中山さんは物語を書いてなんぼだと思うし、ノワール小説が発売されますように。