Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

P.G.ウッドハウス『ジーヴスと朝のよろこび』  ★★★☆

ジーヴスと朝のよろこび (ウッドハウス・コレクション)
ジーヴスと朝のよろこび (ウッドハウス・コレクション)
P.G.ウッドハウス,森村 たまき
 大分長いこと借りてた……早く返さねば。かっちりした小説を読む気になれないとき、というか小説すら読む気になれないにも関わらず、ちょこちょこ読めて愉快で大いに笑えるこのシリーズは稀有の存在です。噴出した回数数知れずだ。スープにもっと浸る方へ浸る方へと思って読み進めると、ああやっぱり! ってなったり、予想の斜め上を行かれたり、でも最後はするっとまとめてくれんですよね。大団円! (どうでもいいけど今の今まで「大円団」だと勘違いしてました恥ずかしい)
 バーティってすらっと細身で長身なの!? 七冊も読んできたくせに容姿についての記述をさっぱり覚えていないとは何たること、と思いつつ漫画化されたあの絵はあながち的外れではないのかなと。だってペーパーバッグの表紙は丸っこくて杖の似合いそうな英国紳士だったんですもの。ジーヴスの細長さとの対比からかもしれないし、ボコの台詞もおべっかかもしれないけど(笑)
 あとがきを読んで思わず涙ぐんだ。ウッドハウスがドイツ軍に捕まって云々の詳しいことは知らなかった。あんなに「古きよきイギリス」を書きまくっていたのに、アメリカで没しただなんて……。「政治に全く興味がない」と明言することすら政治的であるし、関わらずに生きていけるわけはないんだけど、自身の境遇や内面を露ほども作品に反映させず、ひたすら軽妙な話を書き続けたその姿勢は尊敬してやみません。作家の鏡だよ。ジーヴスシリーズのみならず、他の作品も大事に読んでいくことにします。人生の清涼剤として。伝記も、スラング使いまくりじゃなければ原書で読みたいところだなあ。