Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

我孫子武丸『弥勒の掌』  ★★★

弥勒の掌
弥勒の掌
我孫子 武丸
 ここ数年はやっぱりいろんな不満があったんですよね。ぼくらよりちょっと下の世代の中には、ミステリと言えないようなものも入ってきちゃってるし、ライトノベル化してたりもする。それと、最近ミステリ読者がすごく優しくなったような気がしてるんですよ。(中略)みんなわりとミステリを喜んでる。あ、こんなのでも皆喜ぶんだ、というぐらい意外感があって、こんなのでいいのかと思ってたところに、2004年に綾辻さん、法月くん、麻耶くんの本が出て、その書きっぷりがちゃんとしてるな、ちゃんとしてるものはやっぱりいいなあという気がしたんです。(巻末のインタヴュー)

 ものすごく尻すぼみな気はしたけど(これしかページが残っていないのに解決するのかと不安になるくらい)、我孫子さんが後書きで言っているように、コンパクトで読みやすかった。ふええ~となってしまう真相でした(笑)コズミックに続いて宗教ネタだ。
 愛する妻を殺され、汚職の疑いまでかけられて追いつめられたベテラン刑事、蛯原。妻が失踪し、途方に暮れる高校教師、辻。否応なく事件の渦中に巻き込まれていく二人は、やがてある新興宗教団体の関与を疑い、ともに捜査を開始するのだが……。新本格の雄が実に13年ぶり(!)に書き下ろしたミステリ長篇は、綿密な警察取材を踏まえた本格捜査小説です。待ち受けるのは唖然呆然、驚天動地の大破局! ミステリの神が微笑む瞬間を、あなたもぜひ味わってください。(文藝春秋HPより)
 辻はかつて教え子と関係を持ってしまったため、妻と家庭内別居状態。愛しているなら一度の浮気くらい許してくれるべきだとか、ふざけたことを考えている。蛯原はうまくいっていると自分では思っているが、女は抱けばいいと思っているような男。……女として面白くないものを感じる(笑)
 二人の女性、死の真相はなかなかすごいです。そうだったのか~私はうまく騙されましたし、うん、面白い。怪しげな新興宗教・≪救いの御手≫もよし。しかしあの人が哀れでならない。皆開き直るの早いぜ。