Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

平安寿子『くうねるところすむところ』  ★★★☆

くうねるところすむところ
くうねるところすむところ
平 安寿子
「現実はシビアに決まってますよ。でも、そのシビアさに踏みにじられてばっかじゃ生きてけないでしょう。九八パーセントはシビアでも、二パーセントは夢が叶ったとか、やり甲斐を感じる瞬間があるはずですよ。そうじゃなかったら、誰もこんなくそったれな人生を生きてませんて」

 ああ、ほんとなんだ。何もないところに、家が建つ。初めて、そこに居合わせる。
 とても待ちきれない。
 そうだ、待てやしない。この気持ち、この高揚を、徹男に伝えるのを一分だって待てない。

 泣いた……(笑)今日友達に「あんたの思考が30代未婚女性なんじゃないのか」と言われた私ですが(もちろん30代女性はこんなに甘っちょろい女じゃないと思います)梨央の前向きさと家をつくる魅力に泣いた。ベタな恋愛にもとことん弱かった。頑張って梨央!
 梨央は求人募集広告会社で編集の仕事をしている。30歳の誕生日の夜、酔った勢いで工事現場の足場に登って降りられなくなり、鳶の徹男に助けてもらった。素直な笑顔と健康的な肉体に恋をした梨央は、一念発起して土建の世界に足を踏み込む。一方、離婚したことで父の興した工務店をひきつぐことになった、四十五歳の郷子。トラブルだらけの毎日に苛々しっぱなしだ。リストラし、人手が足りなくなった鍵山工務店に、梨央がやってきて……。
 読み始めは、三十路女の鬱憤みたいなものが爆発していていやだったけど、徹男に出会ってからは別の意味で爆発! 恋する女は強いねえ(笑)にっちもさっちもいかなくなってる郷子の工務店に転がり込み、ものすごいバイタリティーを発揮。すごい。家づくりへの情熱がすごい。
 私は家を建てるにあたってこんなに様々な人が関わって、トラブル満載で、でも出来上がると自分の家のように感動してしまうなんて、全く知らなかった。土建の世界を覗くにはとてもいい本だと思う。なんたって素人二人の視点で交互に描かれていますから。
 読み終えると家を建てたくなってきますね。すごくやりがいがありそう。
 自分の生まれ育った家にはなくなってほしくない。親は私たちが出て行ったらマンションに隠居するとか言っているけど……別に、自分が結婚して住み続けたいわけではないんだよね。この家に、両親がいてほしい。実際無理なのかしら。
 大学を卒業して就職したら、私もそんな風に夢を叶える仕事をしてみたい。そんな熱い思いが湧き上がる本でした。ニートの人に読ませたほうがいいよ。ストーリーとかどうでもいいから(暴言)情熱を感じ取ろうよ。