Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

垣根涼介『ワイルド・ソウル(上)』  ★★★☆

ワイルド・ソウル〈上〉
ワイルド・ソウル〈上〉
垣根 涼介
 夢は、そこで砕かれた。
 すべてが大嘘だった。

「おれはその相手から受けた恩をおまえに返す。おまえも、このおれから受けた借りをいつかは誰かに返す。そういうふうにして、世界は繋がってゆく」

 無知って恐ろしくて恥ずかしいことだ。戦後、ブラジル移民の存在は知っていたけれど、まさかここまで悲惨だったとは……国家ぐるみの人殺しじゃないか。ひどい。その犠牲の上に日本人は成り立っていることを知らなければならない。
 一九六一年、衛藤一家は希望を胸にアマゾンへ渡った。しかし、彼らがその大地に降り立った時、夢にまで見た楽園はどこにもなかった。戦後最大級の愚政“棄民政策”。その四十数年後、三人の男が東京にいた。衛藤の息子ケイ、松尾、山本――彼らの周到な計画は、テレビ局記者の貴子をも巻き込み、歴史の闇に葬られた過去の扉をこじ開けようとする。(裏表紙)
 そんな登場人物の悲惨な過去(あるいは現状)もひっくるめ、ひきつけられた! つまり報復かましてやろうぜ、って話です。貴子の扱いについては女性蔑視臭を感じなくもないが……面白かった。冒頭は外国人の名前ばっか出てきたら嫌だな、と思ってたけど舞台は日本に戻ってきたし(笑)早く下巻が読みたいです。