三崎亜記『バスジャック』 ★★☆
バスジャック
三崎 亜記
「信じてるんだね」
「信じている、というより信頼しているんだ」
「どう違うの?」
これはファンタジーみたいでホラーっぽくもあり、不思議な短篇集でした。前作も設定は不思議だったけど。川上弘美のようなうそと現実の境界がとろりと溶けてしまった感じではなく、もうすこし理路整然とした印象を受けました。さっくりと、故意に飛び越えたというか。難しいな。色に例えると川上弘美は渋い赤で梨木香歩は緑で三崎亜記はみずいろ。さらに分からないか(笑)
二階扉をつけてください:町内で私の家だけ、二階扉をつけていないという。回覧板で廻ってきたようなのだが、読まなかったのだ。いくつかの業者に電話して見積もってもらうが、どこも内容と値段が違い……。
しあわせな光:街を見下ろす丘の上に立ち、双眼鏡で僕の家に灯る明かりを見る。そこには幼い僕と、両親の姿が。
二人の記憶:僕と薫の記憶にズレが生じている。しかも、日に日に増していくのだ。
バスジャック:「バスジャック」がブームになっている。バスジャックは通常4人チームで行われ、様々な決まりがある。移動距離他3つの観点から、ランキングをつけているサイトもある。
雨降る夜に:彼女は雨の降る夜に、僕の家を訪れる。大事そうに本を抱えて。
動物園:日野原柚月の働く会社では、動物がいる空間をプロデュースするのが仕事だ。寂れた動物園で珍しい動物を「演じる」。
送りの夏:麻美は母を追って若草荘にやってきた。そこには、精巧に作られた人形のように微動だにしない人たちと、彼らを世話する人たちが暮らしていた。
二階扉のオチが素敵です(笑)動物園が一番好きだったかな。
あらすじを書こうにもどうしたらいいかわからなかった。この本の世界では、不思議が常識だから。わざわざ説明することではないのだ。東都・南都という言葉がいくつかの話で使われていたから、世界は共通なのかな。
嫌いではないけど強いて好きでもない。新刊が出たら読むけど買いはしない。そんな作家さんです。でも、前作より好きだよ。