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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

東川篤哉『交換殺人には向かない夜』  ★★☆

交換殺人には向かない夜
交換殺人には向かない夜
東川 篤哉

「資格は?」「大型免許」
「趣味は?」「探偵――」
「なにッ?」「――小説」
「特技は?」「ヴァイオリンを六歳から――」
「ほほう!」「――八歳まで」
「……!?」「他に何か?」

「ハッキリいえば、僕は雪の上で誰かを追跡した経験なんてないんだ。僕らの街に雪なんか滅多に積もらないから」
「まったく、ドジなんだから!」
「悪かったね。しかしそういう君は、この緊迫した場面でいったいなにを抱きしめているんだい?」
「え!? なにって――あーッ!」


 コージーミステリとでも言うの? これを読んで思い出したのが安孫子武丸『8の殺人』。無理矢理ギャグを詰め込んだというか、苦手な分野……。私は正直彼のギャグではさっぱり笑えなかったんですが、この現場は騒がしいなあとは思いました。でも面白くない。いや、ストーリーそのものは面白かったんだけど、ギャグで笑えはしない。登場人物たちは楽しそうだなあ、と思ってもこっちにまで伝わってこない。
 浮気調査を依頼され、使用人を装って山奥の邸に潜入した私立探偵・鵜飼杜夫と朱美。ガールフレンド・さくらに誘われ、彼女の友人が待つ山荘を訪れた探偵の弟子・戸村流平。寂れた商店街の通りで起こった女性の刺殺事件の捜査をおこなう刑事たち。別々の場所で、全く無関係に夜を過ごしているはずだった彼らの周囲で、交換殺人はいかにして実行されようとしていたのか?(裏表紙)
 残念なことに、これシリーズの四作目らしいんですよね。「烏賊川市」シリーズだって(笑)いかがわしいな!! 前のストーリーを知らないから面白みが感じられなかったのかも。やっぱり順番に読まなくてはね! 『完全犯罪に猫は何匹必要か?』はタイトルだけ知ってたんだけど、この作者だったのか。
 一見ものすごく単純な事件のようで、しかしさすがにこれじゃあミステリになんないだろ、と思っていたら予想以上にびっくりな事態となりました。そうくるか。伏線もきちんとはられていたみたい。あの人が電話を取った時はパニックに陥りましたよ。
 ミステリの筋自体は本格ものなんだけど、雰囲気が軽々しいというか薄っぺらい。軽い口当たりのミステリも好きですが、これは好みではなかったということで。初期の島田荘司の御手洗シリーズにおけるユーモアが大変好みでございます。
 我孫子は『8の殺人』の後に『殺戮に至る病』を読み、一冊で評価を下すのはよくないなと改めて思ったものの、さてこの作者はどうであろう……。

 

 依頼人・咲子=さくらの知己・彩子=和泉刑事、か……作中の二人が同一人物だった、てのはよくあるけど三人までは珍しいのでは。しかも、時間をずらすトリックも併用。さっすが女優!笑
 咲子が殺されたと思ったら、その電話を彩子が取るんだもん。鵜飼もわざわざ電話なんてかけなくてもいいのにっ!