谷崎潤一郎『刺青・秘密』 ★★★★☆
肌をさされてもだえる人の姿にいいしれぬ愉悦を感じる刺青師清吉が年来の宿願であった光輝ある美女の背に蜘蛛を彫りおえた時、今度は……。性的倒錯の世界を描き、美しいものに征服される喜び、美即ち強きものである作者独自の美の世界が顕わされた処女作「刺青」。作者唯一の告白書にして懺悔録である自伝小説「異端者の悲しみ」ほかに「少年」「秘密」など、初期の短編全七編を収める。(Amazon)
天下の谷崎氏にこんなこと言うのもなんですが、文章が上手いです。上手いです。うんうん唸りながら読んでしまった。津原泰水氏がブックリストで上げていたので、ずっと読みたかったんだけど、このリスト2012年のものですね。4年積ん読してたわ。
『刺青・秘密』谷崎潤一郎(新潮文庫)
捻った選択にしようかと思ったが、ここに収録された数篇の、頑なな完成度をやはり好む。(津原泰水の本棚 | ラヂオデパートと私)
最初に「刺青」で幕を開けるのいいですよね。それから「少年」「幇間」「秘密」とフィクション感の強いものが並び、私小説的な「異端者の悲しみ」が来る。これは発表年月と一致してるらしいですが、それすら狙ったのかなと思わずにいられない良い並び方だ。わたし個人が自然主義の小説よりフィクションフィクションしたものが好きなので、谷崎氏がこれらを引っさげて文壇にやってきてくれてよかったです。
買って損はない。