Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

江國香織『赤い長靴』  ★★★

赤い長靴 (文春文庫)

赤い長靴 (文春文庫)

「私と別れても、逍ちゃんはきっと大丈夫ね」そう言って日和子は笑う、くすくすと。笑うことと泣くことは似ているから。結婚して十年、子供はいない。繊細で透明な文体が切り取る夫婦の情景―幸福と呼びたいような静かな日常、ふいによぎる影。何かが起こる予感をはらみつつ、かぎりなく美しく、少し怖い十四の物語が展開する。(Amazon) 

スイートリトルライズ』的家庭内ディスコミュニケーションと、『思いわずらうことなく愉しく生きよ』の長女へのDVから暴力を抜いたような感じ。夫婦間の軽いDV話のようなので、いっそさっさと不倫が出てきてほしい……と思っていたのだが、結局不倫は出てこなかった。こんなことを残念に感じる江國小説のふしぎ。

 しかし江國香織の人同士のコミュニケーションってびっくりするほど夫婦内にはないよね。特に子供のいない夫婦描写って常に軽いホラーなんだけど。なんなんだ。三人称なので読みやすいし、文章的には「美しい」といえます。