Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

P. G. ウッドハウス『でかした、ジーヴス!』  ★★★★☆

情け知らずのアガサとダリアの両オバさんをはじめ、恥知らずの悪友シッピー・タッピー・ビンゴや怖いもの知らずの悪童トーマスらの猛攻をまえに、またもやピンチにおちいる世間知らず若旦那バーティー。あいも変わらぬ奇人怪人たちが勢揃いした、奇想天外なジーヴス・ワールド全11編。(Amazon

 久々に読んだ。ジーヴスシリーズ、短編集の中ではこれが一番好きだ。特に好きなのは、冒頭の白鳥の話と、「ジョージ伯父さんの小春日和」。

 白鳥の話の「最新どうぶつニュースを聞いている暇はないんだ、ジーヴス」という台詞の「どうぶつ」が平仮名なのはいつ見てもかわいらしいし、フィルマー氏とバーティーの屋根の上でのやりとりは素晴らしい。ジョージ伯父さん〜については「あなたのおひざですか?」の一連の応酬が大好きだ。あとは「ビンゴ夫人の学友」で「パンのかけらが気管に入っちゃったのか?」と尋ねているバーティーと、入ってないけど心遣い有難うございます、といちいちお礼をいうジーヴスの微笑ましさ。上げて行くとキリが無い。ウッドハウスの人部描写には人間愛を感じる。

 翻訳について、最近このような記事を読んだ。

鴻巣 だから、あえて引っかかりのある異化翻訳もできます。それが日本での「透明な翻訳」です。
水村 「外国」というものに触れているという印象があったほうがいいということですね。”

 森村氏の翻訳は本当に原文に忠実で、日本語として読むとかなり回りくどい部分もある。「まなこ据える」ってすごい言い方だな〜と思ったりする。笑 本書は原文でも読んだけど、日本語から受ける印象ほどに回りくどい文章ではなかった。しかし「外国」=イギリスの言い回しのユーモラスさがよく表れている、というか表れすぎていて愉快なことになっているので、私は森村氏の翻訳が大好きです(と何度言ったか分からない)。後ろにある原文を思い浮かべながら、ぜひご一読をば。