Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

吉本ばなな『N・P』  ★☆

N・P (角川文庫)

N・P (角川文庫)

 

7本の短編が収録された「N・P」。著者・高瀬皿男はアメリカに暮らし、48歳で自殺を遂げている。彼には2人の遺児がいた。咲、乙彦の二卵性双生児の姉弟。風美は、高校生のときに恋人の庄司と、狂気の光を目にたたえる姉弟とパーティで出会っていた。そののち、「N・P」未収録の98話目を訳していた庄司もまた自ら命を絶った。その翻訳に関わった3人目の死者だった。5年後、風美は乙彦と再会し、狂信的な「N・P」マニアの存在を知り、いずれ風美の前に姿をあらわすだろうと告げられる。それは、苛烈な炎が風美をつつんだ瞬間でもあった。激しい愛が生んだ奇跡を描く、吉本ばななの傑作長編。(Amazon) 

 こんなあらすじを文庫の裏に書かれたら、ミステリに慣れている人間は色々と想像してしまうじゃないですか。作家の絶筆に二卵性双生児に後追い自殺ですよ。しかし間違いです。吉本ばななです。ミステリではありません。

 本編は特に言うことがない。普通。さらっとした小説が読みたいときには適していると思う。文章的にもイマイチ好みではないんだよなー。江國香織吉本ばなな川上弘美小川洋子あたりは現代日本女性作家として並べられることが多いけど(山田詠美はちょっと違うような気がする)、私個人は、癖のある文章を読んで小説気分を上げたいときは川上弘美、ひたすら美しさを堪能したいときは小川洋子、いざ書くにあたっては気負いのない(ように見える)文体の江國香織吉本ばななは、何でハマれないんだろうか……。たまにすごい好きな小説もあるんだけど。ベタすぎて恥ずかしながら『TSUGUMI』とか。

 吉本ばななが出たときは少女漫画的だの何だの、美しいものを「美しい」と表現するのはいかがなものかだの、色々言われたんだったよね。最近江國香織を読み返して、彼女も端的な言葉の使い方をする人だよなあと思っているんだけど、吉本ばななのそれとはやっぱり空気が違って……別人だから当たり前なんだけど……私の好みは江國香織の方で、彼女は天才だなって今になって分かったよ。これ何の感想だよ。笑

そしてこの作品には今までの私の小説のテーマのすべて(レズビアン、近親者との愛、テレパシーとシンパシー、オカルト、宗教、etc)をできるかぎりこの少ない人数、小さな町内につぎこんだおかしな空間がつまっています。

  ヘテロ気味な印象を持っていたけど、『とかげ』とか、言われなければ女同士にも見えるな。上で挙げた他3者と比べれば確かにそうかも。江國さんは男同士はあるけど女同士ってまだ読んだことない(あるの?)。