Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

J. D. サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』  ★★★

キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)

キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)

不朽の青春文学「ライ麦畑でつかまえて」が、村上春樹の新しい訳を得て、40年ぶりに生まれ変わる。ホールデン・コールフィールドが永遠に16歳でありつづけるのと同じように、読者の中にいつまでも留まる小説。(Amazon

 とにかく翻訳が素晴らしい。読むまでずっとファージョンの『麦と王さま』みたいなノリだと私は勝手に思っていたよ……ぜんぜん違うね……。

 これはいかに主人公視点の語りを若気の至りって痛々しいよな……と楽しむかが勝負なのですか? 上から目線と女性蔑視すごいよね? 「やれやれ」が原文ではどうなってるのか非常に気になるw 楽しさがまったくわからぬまま読み進めましたが本読みとして最低限のタスクということで。

 女の子はどうせ知的じゃないバカな男に捕まるんだ」という言説は現代でもばりばり現役ですが、ちゃぶ台ひっくり返したくなる喪男メンタリティだよね。主人公は喪男ではないけれども。「女の子」をバカにしきったあなたの元に女の子が駆け寄って来るはずないじゃないですかー。とサリンジャーに言っても仕方ないんだけどさ。笑歳を取って、自分の倫理コードに引っかかる作品を素直に楽しめなくなってしまったのは少し残念である。フィービーの関わるところはすごくよかった。フィービーがよかった。

 しかし白地に文字のみの装丁はとてもかわいい。見習いたい。

 上は読書中に呟いていた内容だけど、今(2015年)となってはこの春樹訳のおかげで書いてこられた二年間だった。有難うございました。