Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

津村記久子『ワーカーズ・ダイジェスト』  ★★

32歳は、欲望も希望も薄れていく年だった。けれど、きっと悪いことばかりじゃない。重信:東京の建設会社に勤める。奈加子:大阪のデザイン事務所に勤め、副業でライターの仕事をこなす。偶然出会った2人は、年齢も、苗字も、誕生日まで同じ。肉体的にも精神的にもさまざまな災難がふりかかる32歳の1年間、ふたりは別々に、けれどどこかで繋がりを感じながら生きていく―。頑張るあなたに贈る、遠距離“共感”物語。(Amazon

 一冊の長編と思いきや短いのがもう一つ入っていた。へえ、男性視点も書くんだね。表題作は同じ苗字・誕生年月日の男女の視点が交互に続く話で、今日読んだ他の本より三人称の性格が強いような気がした。基本三人称背後霊を書く人みたいだけど、主人公の名前を一人称に置き換えても違和感はないかんじなんだよね。まあ本書もそうなんだけど、もうちょっと視点と語りの距離がある……と思ったのは男性語り手が出てきたからかもな、と今気付いた。労働の話は共感が多いぶん、性別違うと変わるなあと思う。
 小説としての面白さでいえば、私はイマイチかなあ。ストーリーを楽しもうって姿勢がそもそも間違ってるのかもしれんけど。奈加子パートは好きな描写がちょいちょいあった。中曽根さんとのやり取りとか。笑 男性視点が面白くないんだな。
 一年半の大阪生活のおかげで、大阪舞台の小説を読むのが俄然楽しくなってる。感覚的なとこは分からなくとも、地理的に知ってるだけで面白みは倍増だよ。大阪に住んだことは本当によかった、願わくばあと二年、としみじみしてしまった。