Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

桜庭一樹『私の男』  ★★★★

優雅だが、どこかうらぶれた男、一見、おとなしそうな若い女、アパートの押入れから漂う、罪の異臭。家族の愛とはなにか、超えてはならない、人と獣の境はどこにあるのか?この世の裂け目に堕ちた父娘の過去に遡る―。黒い冬の海と親子の禁忌を圧倒的な筆力で描ききった著者の真骨頂。(Amazon

 うっかり萌えていたわジーザス。面白かったです。近親相姦モノ(特に父娘)は長らく地雷であったけれど、これくらいフィクションであれば楽しんで読めるということが分かった。淳悟が若返るたびにこう萌えがだな……困ったな……。目次を見てお分かりの通り、時系列遡っていくので未来がとても気にはなる。あれ以降書いてもしょうがないんだろうが、そういうしょうがなさを書ききってほしい気持ちもあるんだな。面白かったです。
 貴志祐介みたいな(つってもたいして読んだことないけど)文章に癖がなく、事象だけ把握して読み進めればいい作家やストーリーと違って、文章も味ってください系はものすごく時間がかかるな。『赤朽葉の伝説』はサクサク読めるものだったんだけど。あれは今のところ桜庭さんのベスト。この人の文章は、いい意味でフィクション臭が強いので読んでて引きずられることはないな。少女趣味な一人称書かせるとうまいよねー。