Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

ポール・オースター『ガラスの街』  ★★★

ニューヨーク、深夜。孤独な作家のもとにかかってきた一本の間違い電話がすべての発端だった。作家クィンは探偵と誤解され、仕事を依頼された。クィンは、ほんの好奇心から、探偵になりすますことにした。依頼人に尾行するようにいわれた男を、密かにつける。しかし、事件はなにも起こらないのだが…。アメリカ新世代作家として最も注目される著者の衝撃的デビュー作。(Amazon

 柴田訳。以前読んだのは他の人の訳書だったので、柴田先生版を読み直し。これは『幽霊たち』と打って変わって素敵な文字組だと思うんだけれど。表紙はモダンすぎる感じだが素敵である。つーか何で幽霊たち単行本はあそこまで行間を開けたのだ。解せない。
『シティ・オブ・グラス』版を読んだのは結構前だけど、やっぱり柴田訳の方がすらすら読みやすい気がする。ただガラスの街という邦題と、シティ・オブ・グラスだったら、後者の方がより容易く崩れそうな原題の印象を保持しているような(まあ原題ままだからな)。……あれ、もしかしてCity of Glassには単行本版・文庫版・柴田版と三パターンあるのか。それぞれ『シティ・オブ・グラス』『シティ・オヴ・グラス』『ガラスの街』と微妙に邦題変えてるけど。へえ。柴田先生が主要訳者になったのは私にとって僥倖であったな。
 幽霊たち同様、書くという行為そのものに強いこだわりがある。書くことによって存在している人間の話というか。今回引かれているのはドン・キホーテ。残念ながら私は読んだことがないので何も言えないが、読んでからだと「ウェイクフィールド」のときみたいに見方が変わるんだろう。
 しかし三部作の中でも最萌えだった『鍵のかかった部屋』が一向に来ません。「シリ(Siri)」というオースターの妻の名前、ノルウェー系だそうで。私が散々騒いでいるあのSiriがそこから来ているなら、そりゃ女性声だろうな。