Memoria de los Libros Preciosos

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松浦理英子『ナチュラル・ウーマン』  ★★★★

「私はこの小説を書いたことを誇りに思う」。日本文学という手ばなしの母性礼讃の土壌、さらに小さ神礼讃の土壌に、著者が突き出したナチュラル・ウーマンの意味は大きい。80年代に孤立した輝きを放った畸型的傑作。再刊。(Amazon

 またしんどい恋愛をしているなあ、中山可穂にちょっと似てる。面白かったと言ったらズレがあるので良かったと言います。良かったです。「私」の一人称による短編が三つ。過去へ遡るかたちで並べられているので、最初の話のその後がとても気になる……。
 何が驚いたってこの話、1985年前後に書かれてるのよね。私が生まれる前からこんなレズビアン小説が……あるんでしょうけど、やはり自分の生年というのは一つの大きな目安なので……今読んでもまったく古い感じがないのがすごい。八十年代なんて、一番微妙に時代が出てしまうものなのに……それとも2010年代に入った今、もっともしんどいのは90年代の諸々なのだろうか。本編に関係ないが。
 主人公の外見がまったく想像つかないのは作者の意図なのか私の想像力が足りないのか。蓉子、って名前もまたていを表してるような。全体的に容姿描写は少な目かな
 松浦さんはレズビアンというわけではないのかな。「小説、エッセイとも一貫して、性愛における「性器結合中心主義」への異議を唱え続けている」Wikipedia というのはよく分かった。つーか『犬身』以降本出てないのか! あの話もすごかったですね……レズビアン小説と言えないこともないよね……忘れられない一冊だぜ。あの本読んだときはあまり文章の上手い作家ではないという印象があったけれど、今回はそこまで思いませんでした。
 親指Pには姫野カオルコと同じ匂いを感じる。読もうかな。でも私、二次創作以外のペニスは基本的に好きじゃないんだ。
 松浦さんはフェミ系文献に寄稿してることもあって80年代作品でもミソジニーはあまり感じない。時代的な抑圧は感じるけど。